暁 〜小説投稿サイト〜
SecretBeast(シークレットビースト)
本編 第一部
三章 「戦火の暗殺者」
第十七話「戦前の剣舞」
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
けど伊佐さんは、もしかして試合の前にこのために私に自分の体の秘密を教えてくれた?バハムート、この怪物の名前は知ってる。                    
 細川さんが貸してくれた本に出てきた。わたしはこの怪物がどうにもイメージできなくて他の怪物と一緒に細川さんにイメージ画を書いてくれるよう頼んだ。
 細川さんはまず、無言で紙を鉛筆で真っ黒に塗り上げた、なにしてるのか分からなかったけどそこから消しゴムでだんだん陰影をつけていって、わたしはそこではじめてバハムートを見た。そう暗い闇からだんだんと近づいて、初めは小さいと思ったあいつがものすごい巨大になった。小さいと感じたのはやつとの距離がまだ無限に遠かったからだった。
 そう、もし彼女が本当にその名を持つ怪物を宿してるとしたらこの錯覚も説明がつく。それなら、まずは彼女の構えを見定めるんだ。あれ、わたしの視界に伊佐さんがおさまらない?それどころかさっきより気が強くなっている。何?あの燃えるような闘志に溢れた正眼は、あんなのよほど達者でなければできない。ま、さか今、この瞬間で伊佐さんの剣が私を追い抜いた?なんて成長の早さなの?いやこれはもうそんなレベルじゃない。確実に段違いでどんどん強くなっている。伊佐さんの中の怪物がもともと自分を大きくする意思があるっていったけど、まさか、それがここにきても作用しているってこと。だめ!弱気になっては、こうなったら相手に息をつかせてはいけない!矢継ぎ早に飛び込み面か胴を決めるんだ!
 その軽く引き締まった足がすばやく動く。伊佐が怪物なら友恵は名剣士だ。おのずとどんな剣筋を描けば相手を倒せるか瞬間的に分かってしまう。まるで自分の剣と勝利が直結しているような動き。伊佐はその電撃特攻に反応はしたが、体がわずかに遅れた。それを友恵は見逃さなかった。友恵の剣は本物の真剣のように、受けようとした伊佐の竹刀を、真剣で切ったように切り裂き、伊佐の右面にスパーンと入った。今の彼女は、バハムートの力を受けている。当然、剣の腕も上がっている。
「参った。今のは完全に参った。友恵、すごいよ。私の竹刀が、鋭利な刃物で切ったように切断されてる」
「伊佐さん、でもこれでやっと引き分けです。たぶんもう次の試合、わたしはもう一段強くなった伊佐さんに大敗するでしょう」
部員たちがざわめく本校始まって以来の天才女剣士が、自分から参ったといったのだ。
「ふむ、そこまで読んでいるか、そうだ、今こうしている間も私は格段に強くなっているぞ?どうする?友恵?」
「伊佐さんの上達振りはもはや神懸かっています。なら私も天源流でいうところの『神技』を習得するしかないようです!」
「へえ、竹刀を斬りとばすのだって立派な『神技』だがな!それを超えてくるというのか……」
「伊佐さん、剣道はわたしの全てなんです。わた
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ