暁 〜小説投稿サイト〜
SecretBeast(シークレットビースト)
本編 第一部
三章 「戦火の暗殺者」
第十七話「戦前の剣舞」
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す一筋の閃光にその身を変えて一気に海ごと貫く気位である。
 そして勝負は始まった。お互いが動いた。伊佐はその身の巨大さをぐんと一段と大きくしてそのときには剣はたかだか振り上げられている。友恵はなにか一瞬閃光がパッと瞬いたかと思うととてつもない速さで伊佐の方へぐんぐん距離を縮めていく。もはや距離や広さは二人の気がどちらが上かで決まる。ここまで藤沢は勝負を追えたがそこから先はもはや二人の世界だ。
 伊佐の気を追って広い海を閃光のようによぎっていく友恵。
 なのにおかしい、友恵はこの空間のあまりの広さに自分の体の酸素がどんどんなくなっていくのを感じる。
 今、この一瞬に自分の全運動能力を光にして打ち出した剣が海のあまりの広さにその光がたち切れそうになる。
 しかし、気をしっかり持ち直して、海の遥か向こうに足をもう一段階伸ばしていく。そしてパーンと弾かれたように後ろ足を蹴りだす。身がそのままぐんと速さを取り戻して海を越えていく。弾かれた打突はようやく見えた伊佐の面へと振り下ろされる。
 しかし自分をとおせんぼしたのは巨大な竹刀が目の前に来ている光景だった。伊佐は異常なスピードで手籠手の形で友恵の神速を超えて打ち込んできたのだ。
 一瞬何が起きたか分からない。しかし、自分の片手面打ちの柄もとを握りなおし、その感触がたしかに伊佐の面すれすれまで来ているのを察知した。後もうちょっと巨大な竹刀にそれを追い越すように半身をひねり、打突に力を込めなおす。両者の面が決まる。
 審判の旗がさっと動く三人のうち二人が伊佐の有効を示し、一人が友恵のほうに有効をこの審査、三人の立位置から三つの見え方があった。だが伊佐側の二人はやはり伊佐の巨大な気に押されたのだ。
 そして友恵側の審判はその巨大な伊佐に一瞬の閃光を投じたように見えた。そして結果審査は分かれた。しかし一試合目は伊佐の一本が確定。
 間違いなく一年ではあるが剣道部の大将に抜擢されていた友恵から一本を取ったことにどよめく部員たち。部員の中には怒り出して審判に講義しだす者もでた、けどそれを友恵は整然と手で制す。
 あと二試合、何人たりとも手出し無用と友恵は試合の前に言ってある。二試合目、部員たちの熱い視線を感じながら両者の気はさらに激しくなる。
 伊佐さんが大きく見える。どうしてか私の足も腕も水の重さにもってかれるように重くなる、唯一軽いのはこの長年握り続けた竹刀だけだ。でもだめだ、いまのままじゃとても伊佐さんに追いつけない。この水の重さをなんとかしないと、それにあの伊佐さんとの距離。無限に広がってどうやっても越すことができない。でもそれはわたしの主観でほんとうの距離はいつもと同じそれは長い間、間合いの取り合いをしたこの体が分かってる。
 けど伊佐さんのまえだとそれが錯覚を起こす。気当たりという言葉がある
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