第七章
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一か八かの大博打を打つことにした。
翌日行なわれる筈だった試合はまたしても雨で流れた。
十月二三日、第三戦は西武球場で行なわれた。西武の先発は潮崎哲也、黄金時代から抑え、そして先発で活躍してきたサイドスローである。武器はシンカーである。横浜はリーゼントで有名なハマの番長三浦大輔、立ち上がりに不安はあるもののその独特の二段フォームで知られる実力派である。
ここで観客達が驚いたのはキャッチャーである。何と西武のキャッチャーは中嶋聡である。
「伊東じゃないのかよ!?」
皆目を見張った。実はこのシリーズにおいて注目される対決が二つあった。一つは石井対松井稼頭夫。ショート、そして切り込み隊長同士の対決。そしてもう一つは谷繁対伊東。キャッチャーの対決であった。ここで東尾はその伊東を外してきたのだ。
「また思い切った作戦に出ましたね」
コーチの一人がそう言った。
「これが博打ってやつだ」
東尾は不敵な笑みを浮かべて答えた。
「相手に舐められたら勝負の世界ではそれで終わりだ。今からそれを見せてくれるさ、中嶋がな」
彼はそう言って潮崎のボールを受ける中嶋は頼もしそうに見た。こうして試合がはじまった。
伊東のリードは一つの特徴がある。それはピッチャーに最もいい球を投げさせるというものである。どんな球でもキャッチする。そうした彼の卓越したキャッチング技術があるからこそできるリードである。古田も卓越した技術があるが彼の場合はピッチャーの最もいい球を引き出す。これもまたリードの違いである。
それに対して中嶋は強気のリードで知られる。グイグイと押すタイプのリードだ。
中嶋のリードはストレート主体であった。それが功を奏した。初回石井を四球で出し嫌な雰囲気を作ったものの次の波留を併殺打に打ち取った。これには彼の肩があった。中嶋の強肩はよく知られていたのだ。
「流石に走ってこないな」
東尾はダブルプレーとなりベンチに戻る石井の背を見ながら言った。彼の采配は的中したのだ。
横浜はチャンスを作るものの得点を入れられない。逆に西武は立ち上がりの不安定な三浦からチャンスを作ることに成功した。
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