完結
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初めに失ったものは足だった。
私は人を疑うがゆえにまず足を絶った
次に私は口を失った。
始めに捨てようと思ったものだったが、私には親友がいた。裏切られたから捨てた。
次に私は手を失った。
私は自身で自身を傷つけることを恐れたからだ。
そしてこのあたりから辺りの視線は寒々しく私を締め付けるようになる。
次に私は目を失った。
目に映るものなど世間の知りたくもない事件の公示や私を蔑む目しかなかったからだ。
見て楽しいものなど皆無だった。捨てた。
次、というよりかは、目とほぼ同時期に耳も失った。
目と同様、聞いていて楽しいものなど皆無だ。説明などいらぬ。捨てた。
まだ捨て足りぬ。
この思いがある限り私はいつまでも
絶え間なく捨て去って行く事だろう。
今この状況で私は人間に必要な殆どの要素を失ったのだ。もはや今の私は人間ではない。ガラクタである。
当然ながら飲み物の入っていない缶には「空き缶」なる名前がついているが、
人間性を失った私に名前はない。
この天と地のような差をどのように表現しようか。
この屈辱をどう例えればよいのだろうか。
人間ほど屈強で愚かな生き物はいないが、
私ほど無能で無才な骨と肉のついた獣も他に居ようものだろうか。
そんな私には考えることすら捨てるべきものだと考えた。
最終的に私は、考えずして我が身が報われることを乞い、どうすれば安泰で且つ自然に捨て去れるか、と考えた。
意外にもその答えを導き出す事が出来た。
死ぬという言葉は
便利であり不便な言葉だ。
私は自分自身で自分を殺すのだ。
これは死ぬ。ということではない。
しかし我が身はとうの昔に死に、腐りきっていた。死体を刃物で裂いたところで
首を削いだところでそれは殺人にはならぬ。
私は結局最期の最期まで自身がなにをしているのか分からず、身勝手に身を投げ、
死に及んだのだ。
私が死に、腐肉になり、汚臭を放ちそれが他人に沢山の被害を蒙らせることすら省みず。
我が身は自殺、ではなく、
殺人による被害、でもない。
無知による報復か、
我が身を癒す
我が身に快感を蒙るものを生み出さんとするものを見つけようともしなかった
末路の当然の、必然の結果論、終着点であったのか。それすらもわからぬ。
が、死ぬ間際瞬き一つで私は気が付いた。
―そうか、私はあらゆる部位を《失った》のではなく、
自身の身でそれこそ、《殺して》いたのか、と。
この記録は愚者の
生まれから末路までを描いたものである
―――――――――――
私に残っている最古の記憶は三歳の頃、祖父の家での記憶だ。その頃は分からなかったが私はどうやら物心ついたころから両親はいなかったようだ。
祖父母共に私に優しく、…否
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