完結
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たことを覚えている。
確かに口が無いから無口だな、と。
話すべき口が無い。笑みがこぼれた。
視界はぼやけた。
世間的には中学校に入学したころだろうか。私も義務教育といういらぬ束縛に苛まれ在学にはなっているようだが、私は一度たりとも登校したことはない。
場所も分からない。最早祖父母は何も私に言ってくることはなかった。
それが実は私を酷く悲しませていることは結局打ち明けることはなかった。
そのころ丁度あれは中学一年の夏の話、ニュースや新聞では自殺の話題が目立っていた。首つり自殺。飛び降り自殺。手首を切って自殺…
今思えば自殺の話が目立っていたわけではないのかもしれない。私の心が、目が、反射的に自殺というものに向かっていたという事だったのだろうか。
中学一年の頃から既に自殺しようと思っていたのかと思うと、過去の話であれ多少の驚きと恐怖が沸いた。
しかし当時の私は自殺、…死というものが酷く怖かったのだろう。死ねばどうなるのか、という考えもあったが、やはり死ぬことは怖い。私はニュースでやっているようなことは絶対にしないと心から誓った。
中学二年の冬。祖父母が死んだ。
死因は自殺。
目の前で自身の最も恐れていることをされた。それも私を、曲がりなりにも親代わりとして育ててくれた者が、自殺したのだ。
私は後悔した。
奴隷として、まるで物のように扱っていた
そして私は恐怖した。
私のそのような行動が自殺に導いたのでは、と。
そしてその嫌な恐怖感と嫌な予想はもの見事に的中してしまったのだった。
前途のように当時私のように親のいない、祖父母なるものが子を育てる事自体かなり珍しい、特殊なものであったが、そこに付け加え、その親が自殺するなんていう話はあまりに珍しく、衝撃的であった。
それ故に新聞メディアは私の家を、祖父母の自殺を報じた。
―老夫婦自殺。原因は孫の引きこもりか―
報道内容をみてこれほど驚いたことはなかった。メディアは祖父母の遺書を次のように報じた。
―孫の身勝手な働きに私たちは疲れ切った。遺産をすべて孫に託す代わりに、あの忌々しい孫から離れたい、という理由で自殺―
私は数日間体調を崩した。
連日のように家に新聞企業は家の扉を叩く。
「あんたのせいで、あんたがそうやって引きこもってるせいであんたの爺婆は死んだんだよ!」などという罵声も聞こえた気がする。私はこの時初めて死を恐怖ではなく、自らの救いの道としてとらえた。何も見たくない、何も聞きたくない。
―私は、何のために生まれてきたのだろう
日に日に私は衰弱していった。
体力的にもだが、何より精神的に衰弱した。
私は人間として必要なありとあらゆるものを捨て去ったのだが、私は現にまだ衰弱していっている。何がそうさせているの
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