第五章
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単にツーアウトとなった。野村の立ち上がりは悪くはない。
だがここで高木大成がレフト前ヒットで出塁する。ここで東尾は動いた。
「まずは先制点だ」
サインを出す。高木はそれを見て頷いた。
打席にいるのは西武の助っ人ルディー=ペンパートン。その四球目だった。
高木は走った。それに対し横浜のキャッチャー谷繁元信は素早い動作で二塁に投げた。
その肩は定評がある。高木はあえなく二塁で死んだ。
「谷繁さんっていい肩してるな」
西口はそれを見て言った。彼はベンチ前で投球練習をしていたのだ。
「頼むぞ」
東尾は彼に声をかけた。
「任せて下さい」
西口は強い声で言った。そしてマウンドに向かった。
「さて、と」
彼はロージンを握りながらバッターボックスに向かう石井を見ていた。
「このバッターだけは出塁させたくはないな」
石井の足のことはもう聞いていた。まず彼から横浜のマシンガン打線ははじまるのだ。
攻撃の芽を潰しておきたい、そして何よりもまずはワンアウトが欲しかった。それで気持ちが楽になる。
石井がバッターボックスに入った。西口はロージンを落としボールを握った。
「まずは」
その独特のフォームで投げた。外角いっぱいに入るスライダーだった。
「ふうん」
石井はそれを見て心の中で呟いた。そして西口の顔を見る。
やはり焦っていた。とにかくアウトをとりたいのが手にとるようにわかった。
「あれをやるか」
石井は焦る西口を見て思った。そして身構えた。
二球目はストレートだった。一球目と同じく外角だ。石井はここで動いた。これがシリーズの流れを半ば決定付けた。
「なっ!」
それを見て西口は叫んだ。彼だけではない、西武ナインも、東尾もアッと驚いた。
何とバントだ。石井は西口のその外角へのストレートを三塁側に転がしたのである。
「しまった!」
西口は咄嗟に動こうとする。だが態勢が一塁側に流れていて反応が遅れた。
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