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問題児と最強のデビルハンターが異世界からやってくるそうですよ?
OP ~オープニング~
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―」

 最後の俺の言葉を聞いても、バージルは止まらない。
 その手に握るのは、俺たち兄弟の父親が振るった最強の魔剣。
 それを構え、俺を見据えるとバージルはそのまま俺めがけて走り出した。
 俺も、もう迷うことは許されなかった。これまでずっと共に戦ってきた親父の形見魔剣・リベリオンを手に……俺もバージルめがけて走り出す。
 雄叫びをあげ、互いがすれ違うそのときに俺たちは剣を振る。

「らァァァァァァああああああああああああああああ!!」
「ハァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 ザンッ!! と。
 剣が肉を斬り裂く音が、濁流の音に紛れて響く。

 決着が、そこでついた。

「あ……ぐぁ……あぁ……」

 俺の剣が血を分けた兄を斬り裂き、そしてバージルは魔剣とアミュレットを落とす。
 だがすぐにアミュレットを拾うと、そのままバージルは滝の方へと後ずさっていく。

「……これは誰にも渡さない」

 バージルは、アミュレットを片手に俺を見据えると、そう言った。
 そこには力に固執する冷徹な悪魔ではない……家族を思いやる、一人の兄の姿が、あった。

「これは俺のものだ……スパーダの真の後継者が持つべきもの――」

 やがてバージルが、あと一歩でその滝から落ちるというところにまでに至ったとき、俺はヤツの元へと駆け寄った。
 だが、バージルは刀を抜いて俺を制止する。

「お前は行け。魔界に飲み込まれたくはあるまい……俺はここでいい……親父の故郷の、この場所が……」

 そうして、バージルは俺の目の前で、自ら滝へと落ちていった。
 手を伸ばす俺。でもそれはバージルに届かなかった。
 あいつは俺の手を拒絶した。刀を振るい、俺の手を斬った。
 ただ俺は……バージルが……ただ一人の家族が、闇に落ちいていくのを見ていることしかできなかった……

 ……俺は、バージルを救えなかった。
 あいつが、悪魔としての生き方を選ぼうとしているのを止めることができなかった。
 差し出した手を斬られても、それでも落ちようとするあいつを止めることは、俺にもできたはずだったのに。
 俺の手をあいつが拒んだことが、どうしようもなく俺の心を揺さぶって。
 俺は……もうそれ以上、何もすることができなかった。


*****


「……ったく、またかよ」

 ダンテは事務所のソファの上で目を覚ますと、苛立たしげに舌打ちして起き上がった。
 あんなことがあって、もう五か月も経つというのに。
 未だに過ぎたことを引きずってばかりなのかと思うと、我ながら女々しいものだと自嘲せずにはいられない。
 不機嫌さ丸出しの大股歩きで、そこらへんに倒れている椅子のところにまで行くとその椅子を蹴り飛ばす。
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