第52話 「皇太子殿下の切り札」
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といって、下級財とは限りませんからね」
「そうだよな〜」
たとえば、本で言えば解りやすいだろうか?
ハードカバーの本と文庫本。
ハードカバーよりも文庫本の方が安い。しかしハードカバーの方は大きくてかさばり、持ちにくい。ちょっと持ち歩いて読むには、文庫本の方が好まれる。
好む者が多いから売れる。という事は安いからといって、文庫本を下級財と言えるだろうか?
収入が多いからといって、ハードカバーばかり買うとは限らない。それは値段だけの問題ではないからだ。この場合、値段に差はあるが、両者とも上級財扱いになる。
頭の痛い問題だ。
「それに基本的に俺は、計画経済には反対なんだ」
「ふむ。そうですか?」
「ただな〜。俺が言わないと動かないから言うしかない」
「無意味な自主規制がありますからな〜」
皇太子殿下が皮肉げに笑う。
昔のルドルフも俺と同じだったかもなと仰る。
なぜと問う。
「人任せにする奴が多すぎるんだよ」
ルドルフに任せっぱなしだった。
あれも頼む。これも頼むばかりじゃ、嫌気が差す。
そのくせ、一端に口を挟みたがるんだ。
で、結局。ああ解った。俺がやるから口を挟むな、と口出しできないようにされた。
ある意味、共和主義者たちの自業自得というやつだとは、皇太子殿下の弁だ。
「まあ、今も昔も世の中を動かすのは、プレイヤーだ。評論家じゃない。自ら動く奴が世を動かす。人がやっているのを見て、偉そうに言う奴らじゃない」
クロプシュトックの息子なんか良い例だろ?
と皇太子殿下が笑みを浮かべた。
確かにヨハン・フォン・クロプシュトックは自ら考え、動いている。その行動がブラウンシュヴァイク公爵やリッテンハイム候爵をも動かす原動力となった。
「とはいえ結局、ルドルフの悪影響が響いている。もっとも今の現状をルドルフが見たら、呆れるだろうがな。歴史は繰り返すと言う奴だ」
「不敬ですぞ」
「それがどうした。こちとら皇太子だ。文句は言わせねえよ」
やっぱりこのお方の俺様ぶりは、たいしたものだ。大帝相手にも萎縮しない。
銀河帝国の二代目がこのお方だったら、帝国はどうなっていただろうか?
案外、大帝とケンカしながらでも、うまくいっていたのではないか?
それにしてもよく勉強しておられる。
「士官学校に入る前から、改革については考えていたからな。あの頃はかなり勉強したぞ」
「そんな昔からですか?」
「問題を探るたびに、やってられっかという気分に陥ったが……」
「私も頭を抱えつつ、やっております」
「ざまーみろ」
「ひどいですな」
「目を逸らしすぎたからだ」
俺が頭を抱えている理由が解ったかと、皇太子殿下は言った。
知りたくなかった
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