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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第52話 「皇太子殿下の切り札」
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問題は、結局は気合に左右される」
「精神論ですか?」
「そうかもしれんな。帝国は成長するのだ。してみせる。そういう気概がないと、な。特にトップはだ」

 確かにトップは上を向いていてもらわねば、なりませんな。
 下ばかり見てるトップの下では、息がつまる。

「それに上級財と下級財の問題もあるしなー」
「限界消費性向の問題もですな」
「あたまいてー。まあ同盟よりははるかにマシなんだがな」

 皇太子殿下がカップに口をつけつつ、仰った。
 フェザーンを手に入れたことで、解った事がある。

「帝国は自国建て債務ですからな」
「あいつら、フェザーンに借金してたんだぜ。国債を買い取ってもらっていた。まあそれはいいとして、なんでフェザーンの通貨で借金してんだ」
「フェザーンに条件を飲まされたんでしょうよ」
「自国通貨なら、中央銀行に金を刷らせて、国債を買い取る事もできる。インフレが心配だがな。ところがあいつら、金利まで、向こうに操られてやがる。統一したくないな〜」
「嫌気が差しますな。ある意味、門閥貴族と大差変わりありませんな」

 皇太子殿下が頭を抱えて、ため息を吐いておられる。
 統一すると言う事は、同盟の借金を背負う事になってしまう。
 巨大な自治領であり、金食い虫を飼うようなものだ。正直なところ、帝国だけでも厄介なのに、借金漬けの他国など、欲しくない。
 いらんと言って、蹴っ飛ばしてしまえるなら、どれほどありがたいことか……。
 もしそうできたなら、とっておきのシャンパンで祝杯を上げても良い。

「民主主義の欠点を教えてやろうか?」

 俯いていた皇太子殿下が、顔を僅かに上げ、上目遣いで言った。

「なんですかな?」
「自由と権利は、無責任と自分勝手に流されるというところだ。だからこそ、自律、自主、自立を掲げたんだよ、アーレ・ハイネセンは。ところが今の同盟はどうだ?」
「衆愚政治を突っ走っていますな」
「だいたい民主主義は、必ずしも良い政体じゃないしな。運用する人間次第なのは、専制政治も同じだ」
「国民総生産は同盟の方が高いのでは?」
「人口比から来る見た目はな。帝国も生産性そのものは低くはないぞ。低ければ、貴族が遊興に金をつぎ込めるわきゃねえだろう。どうしたって、無いところからは取れない。取るものがそもそもない」
「平民達も趣味に、金を落とせるぐらいですからな〜」

 ジークの父親は蘭の栽培が趣味だという。
 蘭も案外高い。にもかかわらず買えるのだ。つまり生活必需品ではなく、贅沢品を買える。買おうと思えるぐらいには、余裕がある。でなければ商売が成り立たん。
 貴族のみを相手にしているだけでは、成り立たないものだ。

「上級財と下級財も厄介だよな」
「まあ確かに」
「安いから
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