第52話 「皇太子殿下の切り札」
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。化けの皮が剥がれる事を恐れているのだ」
バカが、何を言ってるんだ。例え皇太子が臆病だったとしても、直接交渉するのは皇太子じゃない。部下だ。交渉事に強い者を交渉に当てれば良い。
剥がれるような化けの皮などないんだ。そんな事も分からないのか?
「戦争も同じだ。実際に戦って負けるのを恐れている。帝国改革という看板に傷がつくのを恐れているのだ。だから綺麗事ばかりいう」
綺麗事?
帝国改革が、綺麗事だと? 我々同盟は、帝国の圧政に苦しむ民衆を解放するという看板を、掲げている。あの皇太子が帝国改革をして、平民たちが貴族の横暴から開放されるなら、それは歓迎すべき状況だろう。
それを綺麗事だと!!
■宰相府 財務尚書 ゲルラッハ■
「産婦人科の医師たちが悲鳴を上げているようですぞ」
「頑張れ。嬉しい悲鳴という奴だろう」
「まあ、そうでしょうが」
帝国では、ぽこぽこと赤ん坊が、毎日のように生まれてきている。
この分では近い将来、人口が倍に増えるかもしれん。
はぁ〜。思わずため息が出てしまう。
学校を新しく建てねばならんし、それに、ミルクに医療品の増産も必要になる。なんといっても億単位だからな。
今年一年で、生まれてくるであろう子どもの数は、十億を越える。
いったいどうなっているんだ?
「二百五十億が、二百六十億になったところで、大した問題じゃない。これぐらいでは、まだまだ足りないぐらいだ」
と、皇太子殿下は仰るが、教師の数も足りないし。
保育士も足りん。頭が痛い。
「殿下、書類をお持ちしました。軍務省からです」
「ああ、ありがとう。そこへ置いておいてくれ」
寵姫の一人が、軍務省からの書類を持ってきた。
暗い目をしている。黒くて、光沢の薄い目だ。暗い雰囲気に覆われているな。顔立ちはかわいらしいのだが、表情がない。もったいない。笑えばかわいいだろうに。
「冷凍イカはあいかわらず、暗いな」
「殿下、ひどい事を仰る」
「悲しいおめめをした冷凍イカじゃねえか」
「なにを戯けた事を仰るやら。いつか刺されますぞ」
「色恋沙汰で死ぬなら本望だ。後は任せたぞ」
「これまた冗談ばかり」
冗談はこれぐらいにして、本題と行きましょうか。
書類を取り上げる。
この一年で向上したのは、出生率だけではない。
民生品の質。その品質も向上した。同盟のものと比べても遜色ないほどに。
税金を引き下げられたために家計にゆとりが出てきた。可処分所得が増えたのだ。しかもそれは皇太子殿下の治世が、そうそう変貌しないと思われているお蔭で、将来に対する不安がさほどない。
すなわち、
「消費に回される金が増えたと言う事ですかな?」
「景気は気からだ。この手の
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