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SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
序章  はじまりの街にて
5.葛藤の末に
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 その長い柄から生まれる遠心力の乗った《薙ぎ払い》、そして重力をも上乗せした《振り下ろし》。
 刃渡りが短いので、剣や刀には殺傷力という点では叶わないが、一撃の威力、威力の乗せ易さは、槍に利点がある。
 俺はイノシシに向かって走りながら、槍の上下を持ち、真横に限界まで振りかぶって、槍の中腹を自身のわき腹で押し込むようにして、イノシシの直前で体ごと回転させる。
 わき腹あたりで押されて撓(しな)って曲がった槍は、槍の上部を持つ手を離すことで、体から離れるとともに元に戻ろうとする。
 テニスのバックハンドスウィングのような槍の横薙ぎ。東雲流《弓風》。

「――ハッ!」

 回転横薙ぎの速度と撓(しな)りの反動の速度が丁度重なり合った一閃が、イノシシの横っ面に直撃した。
 吹き飛ばすこと目的としていたので《斬撃》ではなく、槍の刃の腹を当てるようにして《打撃》として放った。
 目論見は上手くいき、打撃音にしては高い音を響かせて、イノシシは横向きに転がっていった。

「…………」

 金髪の少女の前で残心を取りながらイノシシを睨む。
 イノシシはすぐに動きを止め、輝きを放ちながら粉々に砕け散った。

「…………ふぅ」

 この仮想の世界でも、攻撃速度や命中箇所によってダメージはかなり違ってくるようだ。
 今の攻撃は、速度だけなら現在の俺の身体能力では最高の一撃だった。
 己の力の無さを、撓(しな)るという槍の特性を最大限利用することで補って、放った一撃。
 それでも、あのイノシシの体力が全快ならば一撃では倒せない。
 今、倒すことが出来たのは、恐らくこの子たちが少しづつイノシシのHPを削っていたお陰だろう。
 俺は振り向いて、少女たちを見た。三人とも驚いたような顔をしている。

「…………」

 俺は、この子たちに聞くことがあった。聞かなければならないことが。
 金髪の少女が、俺を見上げて口を開いた。

「……あ、あの……ありが――」
「どうしてだ」
「――え……」

 少女の言葉を遮り、俺はその言葉を言った。

「どうしてこんな時間に街の外に出ているんだと聞いた」
「……あ」

 この子たちよりも前に出ていた俺が言えた義理ではない。だが俺は、自分の持つ技術なら大丈夫だという自信があった。
 ともすれば過信とも思われるかもしれないが、それでも《戦い》ならどうとでも出来ると自負していた。
 俺には何年も鍛えてきたという実績がある。それが今、俺を支えてくれる柱となっている。
 この子たちにそれがあるとは思えない。この子たちの行動は、俺から見たら《無謀》としか思えなかった。
 だから、ここに来ることになった理由があるなら、俺はそれを知りたかった。

「そ、その……」

 金髪
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