第六十一話
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と、まずは日本刀の名前が目についた――《銀ノ月》、という名前がだ。
「リズ、これは……」
アバターと同じようにランダムで決まるはずの武器の名前が、ゲームを超えて同じ名前になるとは考えにくい。リズが強化途中で何かやってくれたのだろう。
「ふふん、驚いたでしょ? レプラコーンのスキルで、自由に名前がつけられるみたいでね……やっぱりあんたの刀は、この名前じゃなきゃね」
自信満々に(なくなった)胸を張るリズに感謝しつつ苦笑しながら、試しに鞘から刀身を抜いてみることにする。――瞬間、鈍い銀色の光が俺の視界を遮るほどに輝き、奇妙な紋様が刻まれた銀色の刀身が現れる。確かこの紋様は、あのレプラコーンが作っていた赤銅色のハンマーに彫ってあったもので、調べてみると刻んだ物体のステータスを上げるもの、らしい。
「……振り心地も上々……ん、流石はリズ。良い刀だな」
「でしょー! 個人的にも良い出来……なん、だけど……」
最初の上機嫌から、どんどん言葉尻が下がっていくリズ。彼女が言わんとしていることは何となく分かる。
確かにこのALO版《銀ノ月》はかなり良い出来であり、使う当人からすれば文句などない。だがこの日本刀はリズ一人で造った訳ではなく、あのレプラコーンの協力があってこそ造れたもの。自分一人では造れなかった、と証明されているようなもので、手放しに喜べるようなものではない――
――などということは関係はない。いや、それも少しはあるのかもしれないが、そんなものより重要な要素があった。
『……このスイッチと引き金は何だ(かしら)……』
俺とリズの台詞がほとんど重なる。そう、何故かこのALO版《銀ノ月》には、柄に謎のスイッチと引き金が装着されているのだった。あまり気にしたくなかったがそういう訳にもいかないが、リズも知らないらしく、十中八九あのレプラコーンの手によるものだろう。しかし、何故日本刀にスイッチと引き金がつけたのか……?
「リズ、何か聞いてないか?」
「……ピンチの時に使え、とか言われたんだけど……」
そう製作者に言われようとも、ピンチになった時にどうなるか分からないものなど使えるはずもなく。あまり現実にはなって欲しくないものの、なんとなく結果が予想出来なくもない引き金から試してみることにする。
「……リズ、離れてろよ」
「え、ええ……」
二人で意味もなく緊張してゴクリと唾を飲んだ後、日本刀を上空に向けながら、柄にある謎の引き金を引く。すると――
――ズドン、という強烈な音とともに刀身が頭上に吹き飛んでいき、その数秒後に、重力を伴って刀身が落下してくる。そのまま、俺の気に入らない金色の前髪に掠って数個散らしながら、自由落下で道路の縁石を砕きながら突き
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