第十四章
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第十四章
だが一球で全ては決した。金村は打ち損じてしまいそれが併殺打となった。最後のボールは駒田が取った。
「終わったな」
東尾はそれを見て呟いた。目の前で横浜ナインが一斉にベンチから出て来ていた。
青い星達が歓喜に包まれる。グラウンドも観客席も同じであった。
権藤が宙を舞う。横浜は遂に三八年振りの栄冠を手にしたのだ。
「うちはまだこれからのチームだ。いい勉強をさせてもらったよ」
彼はその胴上げを見ながら呟いた。
「しかし」
彼はここで表情を曇らせた。
「大トロと赤身の違いが見事に出たな」
どちらがトロでどちらが赤身か、聞くまでもなかった。
「成熟度の違いだよ、ここまでやられるとそれがはっきりとする」
彼は苦渋に満ちた顔で言った。誰もそれを否定できなかった。
「二年続けて負けた。三年目はプレッシャーが凄いだろうな」
彼はそう言うとベンチをあとにした。これが彼がシリーズに出た最後の試合であった。
以後西武は三年続けて優勝を逃した。投の西武が強打を誇るダイエー、近鉄に打ち破られ続けたのだ。
「よく日本シリーズだけでチームを見る人がいる」
シリーズ後権藤は言った。
「だがそれだけではわからない。九九・九パーセントはペナントの優勝なんだ。それがどれだけ大変なことか」
これはお互いに激しく嫌悪し合う森も全く同じ意見であった。
「そうした意味で二年続けてシリーズに出て来た東尾も西武も立派だ。それは皆わかっているだろうか」
そうなのだ。ペナントに勝つことがどれだけ苦しいか。それは実際にやってみないとわからないことだろう。
権藤はよく西本幸雄を褒め称えた。シリーズに八度も出場しながら一度も勝つことができなかった人物だ。俗に『悲運の闘将』と呼ばれる。
「君達は西本さんについてどう思う?」
彼はある時親しい記者達に対して問うた。
「どうと言われましても・・・・・・」
誰もが西本の偉大さを知っていた。弱小に過ぎなかった阪急、近鉄を一から鍛え上げ何度も優勝させた名将である。だが結局日本一にはなれなかった。
「私は西本さんが一番素晴らしいと思う」
彼はそんな記者達に対して言った。
「八回も優勝したんだ、それも違うチームでな。こんなことはそうそう出来るものではない」
「はあ」
それは知っていた。だがそう言われても記者達は今一つピンとこない。
「うちも二年続けて優勝してようやく本物だ。西本さんのチームがそうだったようにな」
あの野村が決して嫌味を言うことなく謙虚な態度を崩さない人物がいる。それがこの西本なのだ。彼は一匹狼であり関西球界から半ば追放された身であったが西本の言葉には素直に従った。後に阪神の監督になった時にも阪神OBの言うことには頑として耳を傾けようとしなかったが西本
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