第三話
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街中でこなすタイプのやつなの?」
「あ、ああ……たぶん。俺も詳しくは聞いてなくって」
「……依頼内容でしょ。ちゃんと聞いとかなきゃダメじゃないの?」
「あ、ああ、そうだな。詳しくきくべきだった」
真っ赤な嘘だ。詳しく聞く意味なんぞ全くない。
例の写真が撮られ、それがあの変態の手元にある。それだけでもう十分だった。
(ああ、なんでこんなことに……)
二人で通行人を装って露店のパンをかじりながら、ちらりと標的を見やる。楽しげに街中の露店を回りながら談笑する、小柄な女性。フードごしに見えるその顔には、彼女……鼠のアルゴのトレードマークであるおひげのペイントが覗いている。
その標的……そう、今の彼女は俺にとって『標的』なのだ……に向けて、俺は視線だけで必死に念じる。
(……頼むアルゴ、『圏外』へ出てくれ!)
全身全霊のテレパシーでアルゴに訴えかける。
アスナは、《隠蔽》のスキルを持っていない。それはすなわち『圏外』……人通りの少ない場所でアルゴの《索敵》を誤魔化す手段を、彼女は持っていないということだ。今……主街区でこうして人込みの中では彼女の同行を断る理由がないが、アルゴが『圏外』に出れば自然な流れで彼女の同行をお断りできるのだ。
……まずは横のアスナのをなんとかしないことには、アルゴの盗撮どころではない。
(……頼む! 後でなんでも情報買うから!!!)
目覚めよ俺の超能力とばかりに精神力を振り絞る……と。
「……ん? なんか、アルゴさんの様子が……」
「お、おおっ!? っとと!」
アルゴが何かに気づいたようにふっと顔を上げる。
マズイ、ばれたか!? と一瞬不安になるが、アルゴの顔を見てそれを打ち消す。彼女の顔はこちらを向いていなかった。この人込みの中で、それも《索敵》をしているわけでもない状況では、彼女がこちらに気づくのは……目線を合わせてカーソルを表示させでもしない限り……難しい。
なら、あれは。
「……メッセージかな? あ、走り出した!」
「追うぞ、アスナ!」
何者かからのメッセージか。
俺は走り出したアルゴを追って、人ごみの合間を走り出した。
◆
鼠のアルゴ。
その顔の特徴的なペイントと、「売れるものなら己のステータスでも売り捌く」というその姿勢で名高い、SAOでも指折りの情報屋。そんな彼女と俺の付き合いはなかなかに長く、サブウェポンとして俺のスキルスロットに居座る《体術》も彼女の情報によるものだったりする。
まあだからと言って、それは別に俺がひいきにされているというわけではなく、事実俺の情報も名も知らぬ誰かにいくばくかの金額で売り捌かれている。彼女の噂の一つに
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