第三十八話 もうひとつの遺産
[1/3]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「仮に姫が平和的解決を訴えたとしましょう。グラミス皇帝なら戦争回避を優先したでしょうが―――相手はヴェイン・ソリドール。姿を現した姫を、偽者だとか断定して―――解放軍を挑発するんじゃないですかね」
そこでアルシドは一瞬ラーサーを見て、またアーシェに視線を戻して続ける。
「ヴェインは戦争を望んでいる。都合の悪い事に、あいつは軍事的天才だ」
『(私も夢に告げられた。そなたが姿を現せば戦乱を招き、ヴェインが歴史に名を遺のこす)』
アルシドとアナスタシスから告げられた予測はアーシェにとって辛いものだった。
最早二大帝国の激突は目前まで迫っている。
「帝国軍は全軍あげて開戦準備を進めてましてね。うちの情報では―――」
アルシドは侍らせている美女から渡された書類を見て、読みあげていく。
「ヴェイン直属の西方総軍が臨戦態勢に移行し―――新設の第12艦隊が進発。それと本国の第1艦隊も戦艦オーディーンの改装終了を待つばかり。でもってケルオン派遣軍の第2艦隊が―――第8艦隊の穴埋めに駆り出されますな。―――つまり、どえらい大軍だ」
「それってどれくらいの数なんだ?」
アルシドの言葉にヴァンが疑問を呈する。
「2年前のガルテア戦役の際にアルケイディアで編成されたガルテア鎮定軍は第8艦隊を中心に西方総軍の3分の1で編成されていた。馬鹿弟子にも分かりやすいように説明するなら帝国がナブラディア・ダルマスカに侵攻した時の兵力の最低でも3倍以上。それに本国軍やケルオン派遣軍からも増援がくるとなると5倍はいくんじゃないか?」
「そんなに・・・?」
パンネロがあまりの数の多さに絶句した。
2年前のガルテア戦役の時にダルマスカにアルケイディアが侵攻させた兵力の最低でも3倍以上。
明らかにアルケイディアの狙いがダルマスカ王国再興を目的とする解放軍の鎮圧ではなく、解放軍への協力を大義名分に参戦してくるであろうロザリア帝国軍を迎え撃つことだというのが動員した兵力から子供でもわかった。
「そして、切り札は破魔石」
アーシェの言葉にアルシドは頷いた。
アーシェはアナスタシスの方を向き、話しかける。
「大僧正猊下。王位継承の件は、しばし忘れます。力を持たない私が女王となっても、何も守れません。より大きな力を身につけてから、あらためて」
『(そなたが夢見るのは、破魔石の力か?)』
「破魔石以上の力です」
その言葉を聞いてアナスタシスは目をカッと開き、初めて肉声で話し始めた。
「力をもって力に挑むか。まこと人間の子らしい言葉よ」
「私は覇王の末裔です」
「ならばレイスウォールが遺したもうひとつの力を求めなさい」
「そんなものがあるのですか!」
「パラミナ大峡谷を越えて、ミリアム遺跡を訪ねな
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ