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不老不死の暴君
第三十七・五話 暗殺劇
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いがヴェイン派でもない。
派閥に属さず、君主よりも国家に忠を尽くすタイプの中立派である。
ある意味一番法の番人としてふさわしい人物である。
ドレイスもそのことについてザルガバースを評価していたので彼を睨みつけ、問いかける。
一方ザルガバースも今回の件がヴェインの仕業であると薄々感づいている。
だが、これ以上混乱を長引かせるの得策ではないと考えていた。
何故なら・・・

「―――ロザリアの侵攻が迫る今はヴェイン殿の力が必要だ」
「チッ!」

ドレイスは盛大に舌打ちし、顔を背ける。
その様子を見てヴェインはグラミスの死体を見ながらはっきり聞こえる声で呟く。

「ソリドール家も私とラーサーを残すのみとなった」
「まさかラーサー様をも―――」

この男ならやりかねない。
11年前に自らの兄2人をその手で殺し、そして自らの父を死に追いやった男だ。
己の障害になるなら目の前の男は容赦なく自らの弟に手をかけるだろう。
ドレイスはそこまで考えると剣を抜き、ヴェインに向けた。

「ヴェイン・ソリドール!法の番人たるジャッジマスターとして貴殿を拘禁させていただく」

そう言ってドレイスはヴェインを睨みつけた。
だが、後ろから殺気を感じドレイスは軽く首を曲げて後ろを見る。
ベルガの剣が自分の首下にあった。

「ヴェイン閣下を独裁官に指名したのは法を司る公安総局だ。わかるか、ドレイス? 閣下に剣を向けた瞬間。お前は法に背いた」
「貴様も茶番の共演か―――!」

ドレイスはゆっくり剣を下ろし、ベルガに横なぎに斬りかかった。
が、ベルガの左手で剣の刃の部分を掴まれ止められた。
ありえない。剣で防がれたというならまだ分かるが素手で・・・
ドレイスが現状を受け入れるのに苦労している間にベルガは左手でドレイス剣を払い、顔を鷲づかみにし、反対方向に放り投げた。

「この―――力は―――」

ドレイスは放り投げられ全身が痛み、朦朧とする頭で思う。
さっきのは人間の力ではない。

「ザルガバース。アレキサンダーを与える。ベルガをともなってラーサーを連れ戻せ」
「はぁっ」

ザルガバースはヴェインの命に頭を下げ、謁見の間から出て行こうとした。
すると入り口の方から声が聞こえた。

「閣下。ラーサー殿の保護は私が」
「私を監視しなくていいのか? あれこれと探りを入れてグラミス陛下に報告していたそうだが」
「それは―――」

ヴェインの皮肉にガブラスは言葉を詰まらせた。

「卿は陛下の犬だった。いまさら飼い主を変えるつもりなら―――そうだな。ジャッジマスターの職務を全うしてみせろ」

ガブラスはヴェインの言葉の裏に隠された意味に気づき、倒れているドレイスの方を見た。

「法に背いた者を裁け」
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