第三十七話 夢見の賢者
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ものゆえに。夢は真まことを映す鏡よ)』
「アナスタシス猊下げいか。私は―――」
『(語らずともよい)』
アーシェの言葉を遮り、アナスタシスは続ける。
『(ラミナスの娘アーシェ。そなたの夢をみておった。【暁の断片】を手にするそなたこそダルマスカの王統を継ぐ者。王国再興を願うそなたの夢、私にも伝わっておる)』
「それでは大僧正猊下。アーシェ殿下の王位継承は―――」
アナスタシスの言葉を聞いてラーサーがアーシェの即位の話を始めようとする。
しかし入り口の方から聞こえた大声によってそれは遮られた。
「おおっと、そいつはあきらめてもらえませんかね」
そういった男はグラサンをかけた遊び人っぽい姿で後ろに美女を侍らせていた。
その男をみたセアは僅かに驚いた顔をした。
が、その男はセアに気づかずラーサーに話しかける。
「よお、皇帝候補殿。呼び出されてやったぞ」
そう言われてラーサーは右手を差し出したがその男は握り返さずラーサーの頭をなでた。
するとラーサーは鬱陶しそうに左手でなでる手を払いのけた。
そしてラーサーはアーシェの方に振り向いて話しかける。
「彼に会わせたかったんですよ。この人。これでもロザリア帝国を治めるマルガラス家の方なんです」
「山ほどいるうちのひとりですがね。私だけじゃ戦争を止められないんで、ラーサーに協力を仰いだってわけで」
そう言うとマルガラス家の男はかっこよくグラサンを外して隣に侍らせていた美女にグラサンを渡した。
「アルシド・マルガラスと申します。アーシェ殿下におかれましてはご機嫌麗しゅう」
そう言ってアルシドは跪き、アーシェの左手の甲に接吻した。
王族の手の甲に忠誠ある貴族や騎士が接吻するのは別にありえない話ではないが・・・
間違っても初対面の王族にやるようなことでは決して無い。
「ダルマスカの砂漠には美しい花が咲くものですな」
その様子にアーシェは困惑し、ラーサーはため息をついた。
だが、まだまだこのカオスな状況は終わらない。
セアがいきなりアルシドの後頭部に向かって飛び蹴りを繰り出した。
しかしアルシドも諜報部を統括してるだけあってそれを華麗に回避したが、回避した方向に飛んできた鞘が脇腹に直撃した。
「よお、久しぶりだなアルシド。大体20年ぶりかな? 俺のこと覚えてる? クライスだよ?」
物凄く低い声でそう言ってセアはアルシドに微笑む。
微笑んでいるのだが目が笑っていない上に目が冷たく光ってる。
「ク、クライスさん」
アルシドが2つの意味で驚き、そして絶望した。
2つの意味で驚くというのは【なんで老けてないんだ!?】と【何でこんなところにいるんだ!?】である。
そして絶望した理由はクライスさんの声が物凄く低い
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