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第一章 〜囚われの少女〜
悪魔の所業
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者の死、自分を陥れた神のような存在。

 何もかもを否定するかのように、孤独な男は呟いた。

「何もかも信じられない、ジュリエッタはきっとまだ生きている」
 黒く、その想いはどこまでも黒く、己のその運命を染めてゆく。ガラスのように透明で、純粋な信念はもろく崩れてしまった。
 それからエリオは、孤独な時間を幾夜も過ごした。
 綿花のようにたおやかだった恋心は、憎しみの色に染められた。その色がそこから滴る程までに。

『その目で確かめたくはないか? ジュリエッタが生きているのか死んでいるのか』

 夜になると悪魔が独房の前を、外の自由さを見せつけるかのように何度も横切る。

『お前は易々と信じているつもりか? あんな遣いの戯言を。あれは嘘だ』

『姫はお前が死んだと聞かされて、すでに他の男の物になっているのさ』

 エリオはその言葉を信じるつもりはなかった。

『お前はただの捨て駒に過ぎなかったのさ』

『姫は自分の生活が退屈だっただけじゃないのか?』

『お前は王に嵌められた。この国に復讐するのだ』

 エリオは精神を削がれ続け、その悪魔のように狂気を増してゆく。

『王をコロセ。姫をコロセ』


――


 そんな夜を幾夜も過ごした男。

『此処ヨリ出でて、復讐ヲ。我を此処へ閉じ込めタ、非道な国王ヲ。己ノ我儘に巻き込み、遂にハ我ヲ見捨てタ冷酷ナ姫ヲ』

 疑心暗鬼を生じ、ついには自我を失った。
 男の恨みはその身を黒に染め、悪魔の騎士となり果ててしまった。

 その存在は惨劇を呼ぶ。一つの歯車は孤独の中で大きな存在となり、多くの犠牲を生むこととなる。歯車はより巨大な歯車に飲み込まれ、もろく儚くつぶされる。
 狂った時の歯車は、加速することさえも自らの原動力とし、ただひたすらに加速し続ける。
 この惨劇を止めることは、もはや誰にもできないだろう。

『壊シテヤル、此ノ国ノ全テヲ』

 雷が轟く、暗い灰色の空。分厚い雲がその国すべてを覆い尽くした。


                                −第十六幕へ−

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