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第一章 〜囚われの少女〜
悪魔の所業
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かのように辺りにはまるで気配を感じさせず、無音の状態で翼を広げた。勿論、その姿を目にしたものは一人としていない。唯、一人を除いては。
(おっと。今回の目玉発見! 一番の狙いのレナ姫さんじゃありませんか)
 悠々と宙を舞うこうもりの翼。闇と一体となったその姿は誰も気づきはしなかった。男は調子に乗ったのか、逆さまになり宙に浮かぶ。
「…………」
 そしてレナ姫を正面から、まじまじと見つめた。そしてレナ姫はというと。
「…………!?」
 大きな茶色の瞳と赤い瞳の視線がぶつかる。目が合ってしまったのだ。姫は虚ろな目を見開き男の方を凝視していた。さすがに声は出せないようではあったが、どう考えても異様な光景を目の当たりに、恐ろしさを隠しきれないようだ。
 勘の鋭い子供に接近された時や、男が自在に操る気配を露わにした時以外――この町の誰にも気づかれなかった。しかし驚くべきことに、その姿は一国の姫に気付かれてしまった。しかしなんとも可笑しなもので、姫よりも男の方が驚いている。
 困った男は姫を睨む。鋭い眼光を赤く光らせ、姫の瞳の奥を射抜く。それはまるで、姫の思考を支配するかのように。脳内までも浸食し、その記憶を蝕んでしまおうというのだろうか。
 結果として一国の姫は、謎の飛行生命体に記憶を奪われてしまった。勿論そんな事を知る者は誰一人としていないのであった。

 ほどなくして姫の意識は芝居へと向けられる。今までより少し気持ちが軽くなったような――とてつもなく大切な何かを奪われたような。そんなことには当の本人には見当もつかなかった。


――


 その後、医者と聖職者と王が見守るなかジュリエッタは死んだ――それはエリオの耳に届いた。

 悪魔の囁きのような、殺伐とした歌が舞台に響く。

『ジュリエッタは死んだ』
『だれがジュリエッタを殺した』

 どこからでもなく聞こえる唄。
『ジュリエッタを殺したのはお前だ』

 それは国王の陰謀だろうか。恋の罪は重くのしかかり、エリオは暗く彩られた運命を背負わされた。

 そして悪魔がそばを横切ったかのように、一つの考えがエリオの頭をよぎる。

「この世に神などは存在しない。唯一の女神であった愛しき人も、この世から旅立ってしまったのだという」
 それは悲しき切なき、届かぬ悲痛。
「もはや何もかも、終わった事と同じ。王に見つかったあの時点から、私の命は終わっていたも同じ――ならばどうしてあの時、すぐ死を選ばなかったのだろう」
 今まで歩んできた道を外れると覚悟したあと、死を覚悟しなければならない状況であったことは知っていた。
「自らこの心臓を一突きにしていれば、このような悲劇は生まれなかっただろう。今この世に己の命が存在するのは、どうしてなのだろう」
 己の命、愛する
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