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第一章 〜囚われの少女〜
身分違いの恋
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「歯車と歯車が噛み合うように人々は出会い、物語は動き始める」
 舞台の袖から現れたのは、薄汚れたローブを身に纏った怪しい人物。
「一体、この物語の悲劇の始まりはいつなのだろう」
 あくまで傍観者であるかのように、過ぎ去った悲劇を笑うかのように芝居を演じる。
「気が付いた時は既に遅く、知らないうちに歯車は狂いだす――それに気付くことが出来たのならば、この惨劇は回避できたのかもしれない」
 二階、一階の席から、今年の芝居への期待を込めた拍手と歓声が沸きあがる。緊張感のあるモノローグに、会場全体が一体となって惹き込まれた。自らの身分を人々は、この時だけは忘れる事が出来るのだった。
 第一幕の開演。会場は静寂に包まれる。観客が一番期待するのは、主役――“騎士エリオ”と“姫ジュリエッタ”の登場だ。静寂と仄暗いなか、照明を浴びた二人は現れた。

「我が美しき姫――ジュリエッタ。この国の騎士でありながら、私はあなたのことを愛してしまった」
 片方の手を胸にあてるのは、皮の鎧を身に付けた青年。
「これはきっと、天より与えられた罰なのだ」
「ああ、エリオ。あなたのそれが罰だというのなら、私はなんて罪深いの……もういっそ、姫という名を捨ててしまいたい」
 嘆き、二人は見つめあい、そして供に歌いだす。

『――そう、あの日。運命の歯車は廻り始めた。
この気持ちに恋と名付けた、あの日』

 時は恋の始まりに遡る。仄暗い歌い出しから、旋律は徐々に軽快に。伴って背景も王宮の石壁だとわかるほどに明るくなる。
 美しい姫の、どこかいたずらな雰囲気の美しい歌声が響く。
小鳥のさえずりが聞こえてくるような。
『いけないとはわかっていた』
『でも、嘘はつけないの。私のこの気持ち』
 そこへ騎士は跪き、華奢な手の甲に口づけ歌う。
『守るのが騎士の役目、この気持ちは決して叶うことはない。叶う事――それは重い罪となる』

 素直な気持ちで微笑む姫、恋する気持ちで悩む騎士。
『わがままに。自分の気持ちに正直に』
『報われぬ想いを供にして、愛する者を守り続ける』
――それはせめてもの、騎士にでき得る行為。結ばれることはないと知りながら。

 恋の悩ましさに浸るのも束の間。明るい歌と旋律が途切れるのとともに、騎士は立ち上がり姫に背を向ける。
 そして腰に携えていた剣を抜き、周りの敵から守るように姫の周りを立ち回る。それだけが騎士にただ許された、自分の気持ちに正直に生きるという道だった。


――


 オレリア城内劇場いちばんの特等席。その横に侍り、国の騎士ダニエルはなんとも神妙な表情で芝居に聞き入っていた。その視線は片時も離さずレナ姫を捉えている。勿論、レナ姫を守るためであることには違いないはずだ。
(……自分の気持ちに正
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