第一章 〜囚われの少女〜
身分違いの恋
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「ああ、私の愛しいエリオ。どうせ消えるというのなら、せめて私をさらっていって」
しばらくその場から動ぜず立ち尽くしていたが、エリオは振り返る。今まで抑えていた感情が姫の言葉に揺さぶられ、騎士も己の正直な気持ちに覚悟を決める。
「ジュリエッタ姫様……そのようなまでに私のことを愛しく思ってくださるとは、この身に有り余るほどの幸せです」
そしてジュリエッタの手を取る。
「どうか、その愛の証に口づけを」
そうして見つめ合う二人。
その時、舞台の空気は一変する。
「一体こんな夜に何をしておる! 今すぐ離れよ!」
罵声を発しながら国王が現れた。この場を見られてしまった以上、エリオの命は既に無くなったものと同じだった。
「お父様!? どうしてここに……」
娘の言葉に貸す耳もなく、王はふたりを引き離す。
「わが娘ジュリエッタを――わが国の姫をよくもたぶらかしたな! なんと汚らわしい……」
王は壁に飾られていた剣を手に取り、剣の先をエリオの懐へと向かわせる。
「その罪は重い。即刻死刑にしてくれる!」
憎しみを込めた剣先は肉へと突き刺さるが、気が付いた時は既に遅い。哀れにも、王が刺し貫いてしまったのはジュリエッタの方だった。
体勢を保つことが出来ずその場に崩れ落ちるジュリエッタをエリオは受け止める。狂った時の歯車は、悲劇から惨劇へと加速していく。
ジュリエッタはそれを知ってか知らずか、時に抗うように言葉を振り絞る。
「おとう……さま……ジュリエッタは……愛していますわ……、でも、それと同じに……エリオを……愛しているの……だから――」
「誰か!」
エリオは瀕死のジュリエッタを抱えながら叫ぶ。
「誰か救護の者を! 医者を……早くここへ!!」
その、弱弱しく伸ばされた手を。王は掴むことしかできなかった。
ジュリエッタは、誰よりも国王の手を――事故とはいえ自分を刺した父親の手を探す。その瞳に湛えていた火は、魂の灯のように微かになっていた。
−第十五幕へ−
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