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第一章 〜囚われの少女〜
身分違いの恋
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直に、か。なれるのだろうか? しかし、身分違いの恋は即刻死刑――)
 他人事のように思えず、肌が粟立つような寒気がした。
(い、いかん。考えないようにしよう。騎士は常に、冷静でなくては)
 一方レナ姫の方はというと、何やら不穏な表情だった。考えや想いが頭の中を巡り続け、観劇どころではなかった。
――あの者は一体、何者? なぜあんな所に幽閉されているの? なぜ私と同じ名を……?
――なぜ? どうして? 髪の色、目の色が違うだけでどうしてあんなにも同じ姿をしているの?
 疑問ばかりが頭に浮かぶ。あの者の事、この城の事、この国の事――何もかも疑問だらけだった。
 どうすれば、彼女を助け出せるのだろう。呪いの仮面のせいで私の身代わりとなった、哀れな彼女を。
 このまま彼女を死なせてしまったら。きっと私は死ぬまで後悔する……いいえ。死んでも死にきれずにこの世を彷徨う事になるかもしれない。きっと彼女だってそうなるわ。私の事を呪うでしょう。今だってそうよ。私は、呪われたって何も可笑しくないもの。
――どうすれば、一体どうすれば、彼女の事を助け出せる?
 誰も言わないが、姫のその目元は血色が悪く、きっと暗い色をしていたであろう。
 暗闇の中でも虚ろな目は冴えており、ただ、遠くの方を見つめていた。


――


 物語は進み、ジュリエッタに婚約の話が出たその晩。
「この国の騎士である私と、この国いちばんの麗しき姫。一体、誰が二人の恋を許しましょう?どうか、お幸せに」
 エリオはジュリエッタに背を向ける。
「私のエリオ。まるで私はカゴの鳥だわ。あなたに惹かれてしまうのは、私のわがままだというの?」
 エリオの目の前に回り込み、その手をジュリエッタは両手で包み込む。
「あなたがカゴから救い出してくれる事を、私は望んではいけないの?」
 ただひたすら、自分の愛に正直だった。
「ああ、愛しいジュリエッタ様。私は一国のただの騎士、あなた様に似つかわしいものではありません」
 こちらを真っ直ぐ見つめる瞳から、目を背ける。
「もう、いっそのこと。私はあなたの前から去りましょう」
 ジュリエッタの手から逃れ、エリオは距離を置くように一歩前へ踏み出す。張り裂けそうになる胸を遠ざけるように。
「わたくしめのことは、どうかお忘れくださいませ」
 エリオはただ、自分の運命を受け入れようとしているだけだった。それが己の気持ちを押し殺すことになろうとも。

「待って、エリオ。」
 ゆっくりと、去りゆく背中へ歩み寄るジュリエッタ。
「私はカゴの中を飛び回り、何度もあなたを呼ぶでしょう。カゴを突き破れないだろうかと、幾度もこの身を傷つけながら」
 踏みとどまる兵士の背中に、姫は寄りかかる。一国の姫がここまで情熱的に、騎士に対して懇願するのだ
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