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東方攻勢録
第四部
第一話
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と、思いっきり蹴り飛ばし木にぶつけた。人間を避けるために森の中をさまよいながら何時間がたっただろうか。今日ですでに五体くらいの妖怪は手にかけている。
 妹紅は軽く一息ついた後、また妖怪を探しにその場を後にしようとする。
「もっと強いやつはいねぇのか……ん?」
 二・三歩ほど歩いた瞬間、背後で茂みをガサガサと鳴らす音が聞こえた。風が吹いて鳴るにしては不自然だし、それ以前に他の木々が葉をならすような音をだしていない。
「おい誰かいるのか! でてこねぇならそいつごと燃やすぞ!」
 妹紅は右手に炎を作り出すと、茂みを睨みつけながら威嚇を始める。するとそんな彼女に怯えながら一人の少女が姿を現した。
「すっ……すいません! きっ危害を加えるわけじゃないんで……その……」
 少女はいたってどこにでもいるような人間だった。髪は茶髪で肩ほどまで伸びており、特別長いわけではない。浴衣を着ているので体型はきちんとわからないが、心身ともにまだ発達しかけと言ったところだろうか。特に変わったと思える部分は見当たらなかった。
 てっきり妖怪が隠れて不意打ちでもしようかと考えていた妹紅は、彼女の姿を見るなり残念そうに溜息をつくと、右手に付けていた炎を消して歩き始めた。
「あっあの!」
 少女はなぜか怯えながらも妹紅を引き留めようとする。妹紅はめんどくさそうにしながら振り返ると、目でものすごい威圧を彼女にかけながら返事を返した。
「なに?」
「ひっ……」
 あまりの威圧に気弱な少女は何も言うことができず、縮こまるようにして黙り込んでしまった。
「用がないなら話しかけるな。あんたみたいな人間がここにいるべきじゃねぇ」
 妹紅はそう言い放ってまた歩き始める。そんな彼女を少女はただ見つめるしかなった。


 変な少女と出会ってから数分後、妹紅はなぜかイライラしながら森の中を歩いていた。別に妖怪にコテンパンにやられたわけでもないし、食料が見当たらずおなかをすかしているわけでもない。たださっきから背後がすごく気になっていたのだ。
「おい!」
 我慢の限界を超えた妹紅は、ついに背後を振り返ってそう言い放つ。そこには木に隠れているつもりなのか、さっき出会った浴衣の少女がこっちを見ていた。
 しかし少女はばれてないと思っているのか、なかなか木の陰から出てこようとはしない。妹紅のイライラはさらにつのっていくばかりだった。
「お前だよお前! さっきからこそこそ着いてきてる」
 妹紅がそう言ったところでやっと自分の事だと理解したのか、少女はまた怯えながら木の陰から出てきた。
「だからなんなんだよ! 用があるならさっさと言え!」
「いっいえ! 別に大したわけではなくて……その……」
 少女はまた怖くなって口を閉ざしてしまった。いいかげんさっさと終わらせて一人になり
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