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恋の矢
第八章
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「自分に嘘を吐いてもね」
「納得させられんわ」
「じゃあいいわね」
「ああ、わかったわ」
 それ故にだとだ、敦史は結に言った。
「そのうえで行くわ」
「その意気よ、若し私に彼氏がいなかったら」
「惚れとるか」
「かもね、けれど私浮気はしないから」
「それがあんたの本心じゃな」
「そうよ、相手は一人だけよ」
 結は確かな笑みで敦史に答えた。
「襲って来る奴がいても潰してやるから」
「何処を潰すかは聞かん方がええのう」
「聞かなくてもわかるでしょ」
「まあのう」
 このことは本当に聞くまでもなかった、そうしたやり取りをしながら敦史は体育館裏への入口に来た、結はそこで立ち止まって彼に告げた。
「後はあんただけで行きなさい」
「ああ」
「自分の気持ちに素直にね」
「もう決めてるわ、じゃあのう」
「ええ、それじゃあね」
 結はここでは実際に敦史の背中を自分の手でどん、と叩いた。それで彼を送り出した。
 その送り出された彼は体育館裏に入った、そしてその奥に進む、周りは前に来た時と変わらないが今の彼は違っていた。
 それで奥にいる優子の前に来た、優子は死にそうな顔で立っていた。
 そのうえでだ、敦史に顔を向けて問うて来たのだった。
「返事、聞かせてくれる?」
「ああ」
 敦史はその優子の言葉に答える。
「今からな」
「それで返事は?」
 死にそうな顔をさらにそうさせてだ、優子はまた敦史に問うた。
「どうなの?」
「最初何処に行くのかのう」
 敦史はこう優子に答えた。
「その話するか」
「それがあんたの答えね」
 優子は敦史の顔、特に目をじっと見て問うた。
「そう思っていいのね」
「そうじゃ、何処に行くんじゃ」
「そんなのまだ決めてないわよ」
 優子はほっとしたがそれ以上に泣きそうな顔になって敦史に答えた。
「だって、ずっと怖かったから」
「わしの返事がじゃな」
「そうよ、どうなるかってばかり考えてて」
「あんたはそうだったんじゃな」
「あんたはどうだったの?」
「悩んどったわ」
 受けるべきか受けざるべきかだ、そして最後はというと。
「けど自分の気持ちに素直になってな」
「それでなのね」
「決めたわ」
 それがだというのだ。
「だからじゃ」
「そうなのね、じゃあ」
「何処に行くかはのう」
「これから二人でお話しましょう、けれど本当によかったわ」
 優子は今度は崩れ落ちそうになってこの言葉を出した。
「あんたがそう言ってくれて」
「そんなにか」
「そうよ、本当に怖かったし」
 告白、それを決意することも言うこともだというのだ。
「結にも頼んだし、それで今までずっと不安で」
「それでか」
「ええ、けれどね」
 今も泣きそうな顔でだ、優子は言う。

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