第六章
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「あれはほんのご挨拶です」
「黒貂の毛皮ですか」
「どうぞお収め下さい」
「あれだけの見事な毛皮は見たことがありません」
「ですからほんのご挨拶です」
その黒貂の毛皮もだというのだ。
「お収め下さい」
「見返りはなしというのですね」
「そう思って頂ければ」
カウニッツは思わせぶりな笑みで夫人に答えた。
「何よりです」
「そうですか」
「そして貴国の太子ですが」
「婚姻ですか」
「実は我が国の末の皇女様もまだ決まっていないので」
それでだというのだ。
「どうしようかと思っています」
「左様ですか」
「詳しいお話をしたいのですが宜しいでしょうか」
「わかりました」
夫人は黒貂の毛皮を見た、そのうえで微笑んで述べた。
「では詳しく」
「それでは」
こう話してだった、そのうえで。
カウニッツは夫人とも話を進めた、そしてフランスの廷臣達の周りを動き回り彼等にも振舞った、そうした結果。
フランスとも同盟を結べた、こうしてオーストリアの対プロイセン包囲網は完成した。そのことを女帝に述べると。
女帝は満足している笑みでこうカウニッツに述べた、その述べた言葉はというと。
「侯爵、ご苦労様でした」
「はい」
「これでプロイセンと対することが出来ますね」
「後は戦争になるだけです」
そして勝つだけだというのだ。
「今度こそは勝てます」
「そうですね」
女帝も満足している微笑みでカウニッツに応える。
「それでは」
「ただ」
ここで重臣の一人、場に同席している者が言って来た。
「賄賂に結構使いましたな」
「何、大したものではありません」
「賄賂もですか」
「戦をすることに比べれば」
カウニッツが賄賂に使った額もだというのだ。
「大したものではありません」
「しかも勝てる状況にする為には」
「はい、どうということはありません」
賄賂に使う額はだというのだ。
「別に」
「そうですか、では」
「賄賂はです」
それはというと。
「外交に、謀略に必要ですが」
「その使う額はですね」
「戦争をすることに比べれば実に安いものです」
そして勝つことを考えればというのだ。
「例え宝石やワイン、毛皮をばら撒いてもです」
「その通りですね、黒貂の毛皮も」
女帝はポンバドゥール夫人に渡したその毛皮のことも話した。
「フランスをこちらに引き込むことを考えますと」
「実に安いものです」
高価と言っていいそれもだというのだ。
「戦争はこれどころではありませんし」
「そうですね」
「そしてです」
それに加えてだった。
「勝てる状況にする為には」
「必要な投資ですね」
「それも安い」
勝利、政治的なそれを手にする為にはというのだ。
「プロイセン
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