第五章
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彼等にだ、こうも囁いたのである。
「お困りでしょうか、我が国が宮廷の費用をお助けしますが」
「何と、我が国の宮廷にもですか」
「援助をして頂けますか」
「是非共」
笑顔で囁く。
「オーストリアの黄金や白銀をお渡しします」
「ではお願いします」
「そちらもまた」
「我が国も困っていますし」
「我が国もです」
彼等はこのことにも乗ってそうしてだった。
オーストリアはドイツ諸侯も味方につけた、そしていよいよ最後の仕上げだった。彼はフランスにも赴いた。
そこで細面にすらりとした肢体の女と会った、顔立ちは知的であり優雅さの中にも確かな強さがある。フランス王ルイ十五世の愛人であるポンバドゥール夫人だ。
夫人と直接会いだ、すぐに言った。
「プロイセンのことはどう思われますか」
「さて」
夫人は思わせぶりな笑みでカウニッツに返す。
「そのことは」
「プロイセンの動きはご存知でしょうか」
カウニッツはあえてはぐらかす夫人に言う。
「今あの国はイギリスと手を結ぼうとしています」
「それは確かなお話でしょうか」
「こちらに」
用意してあったプロイセンとイギリスの水面下での動きのことを書いた調査書を夫人の前に出して言う。
「御覧になって下さい」
「わかりました。それでは」
夫人は優雅に応える、そうして。
その調査書を見ていく、そのうえでこうカウニッツに言った。
「このことは事実ですね」
「我が国は嘘は言いません」
カウニッツは眉一つ、顔ではそうしている夫人に述べる。
「全て事実です」
「そうですか、イギリスとプロイセンがですか」
「若しそうなってはです」
イギリスとスペインが手を結べばとだ、カウニッツは言うのだ。
「貴国にとっても厳しいかと」
「それで我が国と貴国がですか」
「同盟を結びませんか」
カウニッツはあらためて夫人に切り出す。
「そうしてはどうでしょうか」
「さて、我が国と貴国もです」
夫人は微笑み己の考えをその微笑みの中に隠してカウニッツに述べる。
「長い間色々とありましたが」
「そうでしょうか」
カウニッツも微笑みそのうえで返す、とぼけてそうしたのだ。
「果たして」
「我が国とイギリスと同じだけ」
このことはまさにその通りだ、フランスはイギリスと同じだけオーストリアと長年に渡っていがみ合ってきている、この場合はブルボン家とハプスブルク家だ。
そのことをだ、夫人は言うのだ。
「そうなってきましたが」
「私は今のことを話しているのですが」
「今ですか」
「このままプロイセンが低国内で伸張すれば貴国にも迫ります」
カウニッツは帝国内の事情から話してみせた。
「最早バイエルンやザクセンに単独でプロイセンに対することは出来ません」
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