第12話 恋するスケ番。乙女のハートは超合金!
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かったんだよ! 普通に勉強して、普通に部活して、普通に先輩とかに恋して、弁当を差し入れしたりとか、普通にやりたかったんだよ! でも、出来なかったんだよ! それが、それがやっと出来そうだったのに……それなのに……なのに……」
途中は言葉にならなかった。何時しか、茜は顔をくしゃくしゃにして涙を流し続けていた。番はどうする事も出来なかった。
茜の心情を理解出来なかった自分。そして、そんな茜を無碍にも傷つけてしまった自分。そんな罪悪感が番の心を支配していたのだ。
「茜、何て言うかその―――」
「君、もう止したまえ!」
茜に向い伸ばした番の手を先ほどの男性が叩き落とした。そのままの動作で涙を流している茜をそっと自分の胸元に抱き寄せて匿った。
「て、てめぇ!」
「君は自分が何をしたのか分かっているのか? 女の子を泣かすなんて、男として最低だぞ!」
「うっ!!!」
男のその言葉は番の胸に深く突き刺さった。かつて、祖父に言われた事を番は破ってしまったのだ。
男は女を泣かしてはいけない。
その約束を事も見事に破ってしまった事に番は愕然となってしまっていた。
「お、俺はただ……」
「言い訳は見苦しいだけだ! 早々に消え給え! それとも、まだ彼女を悲しませるつもりなのか!?」
「……」
番はすっかり意気消沈し、肩を落としてそのままコートを後にしてしまった。先ほどの気合は何処へ行ったのやら。背中から漂う情けなさが余りにも哀れに見えた。
そんな番の事など放っておき、男性は自分の胸元で静かに泣いている茜に視線を移した。
「すまない、木戸さん。僕がもっと強ければ君を守れたのに」
「いえ、良いんです。これも全部私が悪いんです。私がこんな事をしたせいで、先輩や皆にまで……」
「君が気にする事はない。君は何も悪くないんだ。だから、もう泣くのは止めてくれ。君の泣き顔は見たくないよ」
まるで小鳥のさえずりのような柔らかく清楚で、それでいて何処か引き付けられそうになる甘い言葉だった。その言葉を聞き、茜は男性を見上げ、涙を拭った。
「あ、有り難う御座います。先輩」
「やっぱり、君は笑顔が似合うよ。もう彼等みたいな危ない連中とつるむのは止めてくれ。君のその綺麗な顔が喧嘩なんかで傷つくのは僕にはとても辛いんだ」
「は、はい!」
褒められたからだろうか。茜の顔はとても活き活きし始めた。その先輩から離れ、床に散らばった弁当の残骸を拾い集めると、そそくさとテニスコートから離れていく。
「それじゃ、またお弁当作ってきますね!」
「あぁ、楽しみに待っているよ」
互いに手を振り合い、茜はそのままコートを後にした。そのまま去って行く茜の姿を男性は見守っていた。
先ほどの甘いマスクから一変して、何処となく尖りを見せた目線で―――
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