第12話 恋するスケ番。乙女のハートは超合金!
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て全身血塗れとなっているゴクアク組の下っ端達の例の先輩であった。
「だ、だずげでぐでぇぇぇ!」
「的が喋るんじゃねぇよ!」
少しでも口を開こうものなら顔面目掛けて硬球が飛んでいく。正に地獄絵図であった。そんな訳でテニスコートは彼等の鮮血でやっぱり真っ赤に染まっていた。
そんな地獄絵図をコートの外で番と茜は眺めていた。
茜はすっかり元通りになっており、元のスケ番になっていた。その横で番は座り込み、茜が作った弁当を食べていた。
「ったく、あたぃとした事が情けないったらないよ」
「ま、良いじゃねぇか。お前も元通りになって俺も安心したぜ」
「有り難うよ。全く、普通の女になろうなんて夢、持つんじゃなかったよ」
溜息混じりに項垂れる茜。そのままの視線で茜は番が食べているおにぎりを見た。先輩に食べて貰いたい一心で作った弁当だったが、あんな奴にくれてやる気はない。だが、捨てるのも勿体無いと言うので番に挙げた次第である。だが、あの先輩の対応が全て演技だったとするならば、弁当の味ももしかしたら―――
「無理して食う必要はないよ。どうせ不味いんだろう? あたぃの弁当」
「そうでもねぇぞ」
「ん?」
「結構いけるぜ、お前の飯。意外と器用なんだなお前ってさ」
おにぎりを食べながら茜に向い笑みを見せる番。そんな番を見て、茜はふっと笑みを浮かべながらその場を後にする様に歩いて行った。
「意外は余計だよ。意外は……ね」
一言そう告げた茜の顔は、何処か満ち足りた表情を浮かべていた。だが、その時の茜の表情を見た人間はその場には誰も居なかった。
只一人、彼女自身を除いて。
つづく
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