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役のままに
第六章
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「オセローになってたな」
 自分でこう言うのだった。
「俺もな」
「オセロー、そういえばグレイブさんは」
「ああ、オセローが演じた中で一番好きだ」
 そして得意だというのだ。
「まさか自分が本当にそうなるなんてな」
「因果なものですね」
「自分が実際にそうなるとは思わなかった」
 オセロー、それにだというのだ。
「俺もな、それに」
「それに?」
「俺はオセローみたいな性格じゃないと思っていた」
 自分ではだ、英雄でもなければあそこまで猜疑心が深く嫉妬の心が強いとは思っていなかったのだ。だがそれは。
「俺もオセローみたいなところがあるな」
「猜疑、嫉妬ですね」
「そのこともわかった」
「誰にもそうした感情がありますね」
「そのこともあらためてわかった、そういう意味でもシェークスピアは」
 このイギリスの戯作家はというと。
「偉大だな」
「全くですね」
 探偵もグレイブのその言葉に頷く、グレイブはあらためて自分自身がわかった。この不愉快な事件から。


役のままに   完


                        2013・10・22
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