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雰囲気
第一章
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                   雰囲気
 田所雄一郎は焼き鳥が好きだ、それで会社の帰りにはよく食べている。
 赤提灯のよく駅前にある店に入りそこで焼酎と一緒に楽しむ、座る場所は大抵カウンターだ。
 その彼にだ、会社の若手である尾花総司が来てこう言ってきた。
「課長今日もですか」
「ああ、尾花君か」
「ええ、俺ちょっと今日はここでと思いまして」
「今日はここで飲むのか」
「そのつもりで来たんですけれど」
 尾花は田所の隣に座りながら言う。一八〇近いすらりとした長身で細長い顔である。黒い髪を短く刈り上のところだけ伸ばしている。
 その彼がそろそろ皺と白髪、それに腹が目立ってきた三十代後半の自分の上司に言うのだ。
「課長前もここでしたよね」
「ああ、君と夜に会う時はな」
「他の店でお会いすることもありますけれど」
 それでもだとだ、尾花は田所の前にあるものを見て言った。
「絶対それですね」
「焼酎と焼き鳥か」
「はい、その組み合わせですね」
「好きなんだよ」
 田所は葱と鶏肉を焼いたそれを口の中に入れつつ田所に答える。
「焼き鳥がな」
「飲む時はいつもそれですか」
「僕はな」
「たまには他のメニューは」
 尾花はカウンターに置いてあったメニューの一覧を開きつつ田所に問うた。
「食べないんですか?」
「ああ、他は頼まないな」
「あくまで焼き鳥ですか」
「焼き鳥といっても色々あるじゃないか」
「皮にモツにツクネに」
「心臓もあるな」
「あと鴨とかも」
 焼き鳥と言っても種類はある、一口に言ってもだ。
「それとタレに塩に」
「結構あるだろ。豚バラも頼むしな」
「だからそれで満足なんですね」
「飲む時はな」
 今の様な時はというのだ。
「それで飲む酒は焼酎」
「本当にその組み合わせだけですね」
「和風の店でカウンターでこうして座って」
「飲むんですね」
「これがいいんだよ」
 田所は微笑んで尾花に話す。
「飲む時はな」
「俺は結構その時に変えますね」
 尾花の場合はそうだというのだ、実際に尾花はメニューを見回してからそのうえでカウンターの中の店の兄ちゃんにこう言った。
「イカの姿焼きとじゃがバター、飲みものはビールを大ジョッキで」
「それですね」
「うん、それで頼むよ」
 こう店の兄ちゃんに話すのだった。
「後で頼むかも知れないけれど」
「わかりました」
「こんな感じです」
「そういえば君はビールを飲んだりするな
「日本酒もチューハイも。あとワインも」
 そういったものも飲むというのだ。
「肴も色々です。和食系だけとは限らないですね」
「本当に色々飲み食いするんだな」
「というか課長の方が」
 田所が言うにはだった。
「決まってですから」
「好
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