第六章
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「目を見ているからな」
「目をですか」
「ああ、牛の目をな」
「そういうことですか」
トレーナーはベルゴンツィのその話を聞いてすぐにわかって言った。
「目は口程にっていいますからね」
「これまでも牛の動きは見ていたけれどな」
「目ですね」
「ああ、目を見てな」
それでだというのだ。
「相手の動きを読んで動く様にしているからな」
「そう変えたからですね」
「違ってきたんだ」
「トレーニングも変えられましたし」
「食事もな、そうしたことも大きかったけれどな」
「目、ですね」
それを見てだというのだ。
「そういうことだったんですか」
「考えてみれば牛にも目があるだろ」
「はい」
「牛は色彩感覚はないけれどな」
哺乳類で色彩感覚があるのは人間と猿だけだという、他の哺乳類は皆白黒でしか世界を見られないのだ。
「だから赤いマントもな」
「赤で興奮しないんですよね」
「牛から見れば赤いマントも黒でしかないんだよ」
色覚がない、それ故にだ。
「そのはためくのを見て興奮するからな」
「まさにそれを見て、ですね」
「だからな」
それでだというのだ。
「その牛の動きを見てな」
「そういうことですね」
「それがわかったんだよ」
「目ですか」
「人間と一緒なんだな」
感情が目に出る、それはというのだ。
「そこに気付いたんだよ」
「だから変わったんですね」
「そうだよ、これから限界までな」
身体が本当に闘牛士として動かなくなるまでというのだ。
「やっていくよ」
「それじゃあ」
「ああ、明日もあるしな」
闘牛、それがだというのだ。
「料理はな」
「もう切り替えてますよね」
「最近パスタとかパエリアばかりだよ」
ベルゴンツィは笑ってトレーナーに述べた。
「それとオートミールな」
「ワインも節制されててですね」
「ミネラルウォーターだよ、レモンを絞って入れたな」
「本当に健康的ですね」
「それがいいからな」
だからそうするのだった、そして。
その闘牛も見事牛を倒した、そして屋敷に帰り妻に言うのだった。
「本当に目だな」
「それを見てよね」
「ああ、やれたよ」
牛を倒せたというのだ、モンセラートににこりと笑って述べる。
「今日もな」
「牛も目ね」
「目だよ、相手を見るにはな」
「まず目を見ることね」
「そういえば悪い奴の目はな」
ここでだ、ベルゴンツィはこうしたことも言った。
「濁ってるしな」
「ええ、確かに」
「もう何のやる気もない奴の目はぼうってしてるからな」
他の者が傍で必死に働いているのに惚けて上を見ている様な者の目はだ。確かに定まらず馬鹿のそれになっている。
そのこともだ、ベルゴンツィは気付いたのだ。
「目だな、本
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