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ヒゲの奮闘
第三章
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は崩れるのは誰の眼にも明らかであった。悲しいことに。
「早よ打たんかい、ホンマに」
「凡打と三振ばっかりやろが」
 スコアボードには相変わらず零が続く。十一回から双方無得点だ。そのまま呆れる程いい当たりがないまま試合は進む。遂に試合は十七回にまで至った。
「流石は甲子園や」
 誰かが皮肉混じりに言った。
「このまま十八回までいくかもな」
「そやな」
 隣にいたおっさんがそれに相槌を打った。
「それで再試合や」
 甲子園は十八回まででありそれでも終わらなければ次の日に再試合である。実際にそうした試合が今までにも何回かある。戦前は終わるまでやっていた。
「いや、この回で終わりやろ」
「そうなるか?」
「時間見てみい」
 そう言いながらバックスクリーンの方を指差した。
「もう試合はじまって四時間以上やで」
「そんなに経ったんか」
「そやからや。まあこの回で終わりやな」
「そうか。長かったなあ」
 皆それを聞いて溜息混じりに言う。
「そやけどや」
「何や?」
「勝つかどうかまではわからんで」
「どうなるかな」
「権藤の調子次第やろ」
「権藤のか」
 それを聞いて誰かが暗い顔になった。

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