第六章
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「家族共に去りますので」
「そうか・・・・・・」
「さよならは言いません」
彼は市長に冷たい声で告げた。
「貴方はそれに値しない人ですから」
「私は市長だぞ」
「貴方は市長としてすべきことを何も為されませんでした」
つまり市長ですらなかったというのだ。
「ですから」
「馬鹿な、私は」
「貴方を受け入れる場所は何処にもありません」
役人は冷たい声で告げる。
「この世の何処にも」
「この街しかないのか」
「この廃墟しかありません」
市長がいられる場所はというのだ。
「この街で余生を過ごされて下さい」
「この街の人口は今どれ位だ」
市長は去ろうとする役人に問うた、最後にこのことを。
「三百万いたが、かつては」
「三十万位ですね」
「百分の一か」
「皆貴方と自警団に粛清されるか嫌気がさしてです」
死刑に遭うか去ったというのだ。
「そうなりました、そして今もです」
「去っているというのか」
「次から次に、もう駅も無人駅で商店街もシャッターしかありません」
そうした場所もすっかり寂れているというのだ。
「道の両端の店も」
「総て出て行ったのか」
「その街で余生を過ごされて下さい」
役人の言葉に悪意はない、冷たいものだけがあった。
「では」
「・・・・・・・・・」
市長はその場に崩れ落ちた、かつては見事だったが何もなくなった市庁舎において。そして市庁舎の一室において。
自警団の者達だけが騒いでいた、今度はどの市民を槍玉に挙げようかという話をしているだけだった。その話をしながら仕事をしているが。
所詮はならず者だ、まともな仕事なぞ出来ない。決裁すべき書類が山の様になっているが。
彼等はそれ等の書類を平然と燃やしてこう言うだけだった。
「決裁終わり」
「じゃあ今度はあいつだな」
「ああ、あいつも俺達を批判しているみたいだしな」
「あいつを消すか」
「そうしようか」
彼等だけが騒いでいた、しかし彼等が話す間にも市民達は逃げていく。
街に残ったのは市長と自警団だけになっていた、そして街がどうなったのかを伝える者もいなくなった。廃墟となったその街に近寄る者は誰もいなくなったからだ、かつての繁栄は愚か者達の為に廃墟に成り果ててしまった。
誰もいなくなった 完
2013・9・23
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