第二章
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の祟りだの言われるのである。
「山内に何か取り憑いたんちゃうか」
「魔物がか」
「そやろ。そうやないとおかしいで」
「ううむ」
それを聞いて腕を組んで考え込む者がいた。実はこれはあながち間違いではなかった。
「広いね、この球場」
山内は甲子園を評してこう言った。
「東京スタジアムとは全然違うよ。広いとは聞いていたけどこんなにとはね」
少し苦笑いが入っていた。彼が思うように打てなくなった理由はここにあったのだ。
彼が最初にいた大毎は狭い東京スタジアムを本拠地にしていた。永田が作ったこの球場はヤンキーススタジアムをモデルにしていたがその広さはとても再現出来なかったのだ。あまりにも狭かった。その為強力な打線が活躍できたのだ。
山内もそれは同じだった。しかしそれが甲子園に変わると。どうしてもそれを意識してしまったのだ。
「ラッキーゾーンもあるんだけどな」
彼はこうも言った。それでもどうしても外野フェンスを意識して大振りになる。それで彼のバッティングにも狂いが生じてしまっていたのである。
実はこの山内と小山のトレードはその宣伝にも関わらず首を傾げる者がいた。広い甲子園に山内をやり、狭い東京スタジアムに小山をやる。逆ではないのか、と。
「あれは実は阪神の御家の事情や」
そう囁く者もいた。そしてこれはどうやら真実であったらしい。
エースである小山は阪神の一つの派閥になっていた。もう一つの派閥はショートであり牛若丸と呼ばれた吉田義男だ。吉田はパワーはないが芸術的な守備と巧打、そして俊足で知られていた。とりわけその守備は素晴らしく今でも最高の守備だとさえ言われている。
エースの小山とショートの吉田の派閥はそのまま投手と野手になった。食事の際も遊ぶ時にも小山と吉田に別れていた。そしてそこに若きエース村山が入ったのだ。
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