第一章
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足軽
尾張の百姓甚吉は百姓仲間から思わぬ話を聞いた、その話はというと。
「何、足軽になればか」
「ああ、思いきり褒美が貰えるらしいぞ」
「そうらしいぞ」
百姓仲間はこう甚吉に話す。
「殿様はえらく気前がいいらしくてな」
「ふんだんにな」
「これでもかと出してくれるらしいぞ」
「かなりな」
こう言うのだった。
「村の次男や三男はどんどん来てくれとな」
「そう言っているらしいぞ」
「御主も次男だろ」
「このままだと兄貴と家族に田畑を全部取られるだろ」
「だからどうだ?」
「足軽になるか?」
「そうだな」
甚吉は仲間の話を聞いて腕を組んで考える顔になる、そしてこう言うのだった。
「わしもこのままだとな」
「そうだろ、家の田畑は兄貴とその家族のだろ」
「御主のところの兄貴子沢山だしな」
「だったらな」
「もう足軽になったらどうだ?」
「それで身を立てたらどうだ?」
「そうしたらな」
「そうだな、このままうだつが上がらない立場よりもな」
甚吉は考えつつ述べる。
「わしも足軽になるか」
「ああ、そうしろ」
「それが御主にとってもいいだろ」
「尾張の殿様は変わった方じゃがかなり凄い方じゃしな」
尾張一国だけでなく美濃を手に入れた、まさに日の出の勢いだ。
だからだ、彼等も言うのだ。
「足軽になって働いた方がいいぞ」
「どうせ死んでも女房もいないのじゃしな」
「身を立てていい女房を得てもいいであろう」
「そうしろ、村を出てな」
「足軽になれ」
「よし、そうだな」
甚吉は決めた、それで顔を上げて仲間に言った。
「わしは足軽になるぞ」
「うむ、ではな」
「頑張る様にな」
こうしてだった、甚吉は織田家に入った。足軽として入ると周りは彼と同じ様な百姓の家の次男や三男ばかりだった。
その彼等にだ、甚吉は言うのだった。
「御主達もか」
「うむ、そうじゃ」
「百姓の家の三男じゃ」
「わしは四男じゃ」
「村にいてもどうにもならぬからな」
「こうして出て来たのじゃ」
「足軽になったのじゃ」
やはり彼と同じ理由だった、どの者も百姓の家の次男なり何なりだった、そしてどの者もこう言うのだった。
「足軽になって身を立てるつもりじゃ」
「侍になってよい女房を貰ってな」
「そして偉くなるぞ」
「いい暮らしをするぞ」
こう言うのだった、そうしてだった。
彼等は訓練に励み戦に出た、戦で死ぬ者もいたが。
武勲を挙げるとだ、必ずだった。
褒美が出た、そしてその褒美はというと。
「凄い銭じゃのう」
「うむ、これだけ貰えるとはな」
「家が帰るぞ」
「よい服もな」
「そしてじゃ」
家や服だけではなかった、さらに。
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