暁 〜小説投稿サイト〜
魔法世界の臆病な「魔法」使い
進みゆく世界
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づかれぬよう女性は人の群れに紛れ、足を進める。時折、知人や追ってがいないか女性は確認する。
 だるさと眠気の混じった顔はそのままだが、女性の口元は期待に緩んでいた。









 暫く歩き女性がついたのは、一件の家だった。女性がいた家から比べれば小さいが、一般的な平民の家から比べればずっと大きいと言える、そんな家だ。
 玄関前で女性は、今更ながらに寝癖のついたままの髪を思い出す。何度手で撫でても直らず諦め、服の乱れなどを直してからポケットに手を入れる。合鍵を取り出して鍵を開け、家に入る。来たのだと存在を示すように、閉じるときは少し力強く閉め、女性は中に進む。
 
「……忘れてた」

 呟き、女性は玄関まで戻り靴を脱ぐ。久しぶりだったからか、嬉しかったからか。小さなポカだ。
 女性は改めて家の中を進す。そして途中の部屋の扉を、コンコン、と叩く。

「誰だ? どうぞ」

 聞こえてきた声に女性は口を緩ませながら、扉を開け中に入る。
 そこそこ大きな寝室だった。大きめのシングルベッドに、壁際には本棚と暖炉、その前にはソファーがある。安楽椅子も一つある。窓から入る夕日に照らされる部屋は、少し薄暗い。
 パチパチと、火が入った暖炉の前のソファーには、一人の男性がいた。読んでいただろう本が、その手元には一冊あった。
 ソファーから立ち上がったのは中肉中背で、目立った特徴のない男性だった。女性より歳は五つほど上といったところだ。怪訝そうに潜められた眉は女性を見ると解かれ、瞳は驚きに少し大きくなった。

「久しぶりだな。何か用か」

 答えぬまま少女は男性に近づき、そのまま抱きつく。伝わってくる驚きなど意に介さず、少女は回した腕に力を込め、その胸に顔を埋める。嬉しげに、女性は頬をスリスリさせる。

「何か用がなきゃ、ボクは来てはいけないんですか先生」
「そんなつもりじゃないが……おい、力入れすぎだ。痛いから離してくれ」
「嫌です。ボクはもっと、強く抱きしめられたいです。んー落ち着くー」

 存分に男性を抱きしめ、その暖かさを感じてから女性は拘束を解く。
 男性は疲れたような表情をし、ソファーに戻り本を読み始める。女性はすぐさまその元に行き、男性の膝の上に座る。そのまま体を後ろに倒し、男性に寄りかかる。前からは暖炉の熱、背中は男性の体温が女性に伝わる。

「隣が空いてるぞ」
「ここがいいです」
「ならオレが隣に……」
「体勢、反対にしていいですか?」
「分かった、そのままでいい。そのままでいいからな」

 女性としては向き合っても一向に構わなかったが、このままでいいと言われたら無理にするのも気が引ける。

「先生はボクが嫌い何ですか……そんな離れたがるなんて」

 単なるからか
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