番外中編
蒼空のキセキ5
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「だってよ……。まったく、気の抜けない冒険だぜ」
「……うんっ。ぜったい、はなさないよっ……!」
しっかりと抱き合う二人は、にっこりと笑いあった。
◆
「ぜってぇはなすなよ……!」
どきん、と胸が鳴ったのを、私ははっきりと感じた。思えばおかしな話だ。このSAO……バーチャルの仮想世界では、心臓の鼓動なんてないはずなのに。それなのに、寄り添う彼に対して自分の胸の音が聞こえちゃわないか心配になるほどに、心臓が早鐘を打つ。
「う、うんっ!」
赤くなっていく顔を自分でも意識しながら、しっかりと両腕に力を込める。
「うんっ。ぜったいに、はなさないよっ……!」
顔が、ゆでだこみたいになった顔で、私は満面の笑みを作る。こんな状況で、まさに命拾いした直後で、今まさにみんなが頑張っているというのに、不謹慎だと自分でも思う。でも、それでも、私は頬が緩むのをこらえきれない。
(……えへへ……ぜったいはなすな、っていわれちゃったっ)
彼が、私に。
自分のことを、絶対に離すなって。
抱きしめる両腕すらも足りなくなって、私は彼の体に頭を委ねる。頬ずりをするように彼に寄り添う。彼はそれに気づいているだろうか。さすがに、私ほど不謹慎ではない彼は、そんなことを気にする余裕はないかもしれない。
(……好きだよっ。大好きだよっ!)
唇だけで呟く。私は、彼が大好きだ。絶対に離したくない。
(何があっても、絶対に離さないからねっ! もう、聞いちゃったからっ!)
友達として、一緒に馬鹿やってくれる彼が好きだ。
仲間として、力を合わせて冒険するのが好きだ。
でもでも、まだまだ足りない。
私はまだまだ、満足してない。
―――絶対に、はなれんじゃねえぞ。
(……分かったよっ、シドっ)
私はきっといつまでも一緒には冒険できない。これから先、さっきみたいな発作はまた繰り返される。その時、今回みたいにみんなが都合よく助けてくれるとは限らない。今回みたいなことが繰り返されれば、私はもうみんなと肩を並べて……シドと背中を合わせて戦えなくなっちゃう。
(……ううんっ、ひょっとしたら……)
そしてもしかしたら、それはもう「発作」なんて生易しいモノじゃなくて……。
(……でも。でもっ、ねっ!)
それでも私は、一緒にいるんだよ。
私はぜったい、ぜったいにシドと一緒にいるからね。
たとえ何が起こっても、どんな姿になっても、私は離れないからね。
そのときの彼に、私が見えなくっても。
そのときの彼が、私を見失ってしまっていても。
あなたが言ってくれたように、私は絶対に離れないから。
(あ
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