番外中編
蒼空のキセキ5
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フェクトフラッシュが走る。
「シドっ、う、腕からっ!」
「そこはまあいいだろ、次、周囲」
怖くないはずないのに、彼は私にそう言った。
私をあやすように。私をおびえさせないように。
声に従って、またあたりを見回して……私はやっと状況を悟った。
(……シド、助けてくれたんだ)
伸ばした右手に鎖鎌を絡ませながら、彼は左腕で私をしっかりと抱きしめていた。二人をぶら下げるその鎖の先をみやれば、雲の合間の崩れた足場へとつながっている。
おそらくレミだ。
『鎖鎌』は特殊な武器であり、いくつもの攻撃方法がある。おしりについた分銅を投げつける技。鎖で絡め取って、鎌で切りつける技。そして、鎌を《投擲》する技。レミの《投擲》スキルによって投げられた鎖を命綱にして、彼は落下する私を抱きとめた。
「おーし、状況は分かったみてーだな。じゃあ、次は、指示だ。よーく聞いとけ」
私の表情を見た彼は笑みを作る……が、その額には、汗が一筋。
そしてシステムウィンドウでは、決して多くない彼のHPが減少していくのがはっきり見える。
けれど彼はそれをちらりとも見ないで。
「ソラ」
私の顔を、しっかりと見つめて。
「しがみつけ。絶対に、はなれんじゃねえぞ」
はっきりと、そう告げた。
◆
ソラの両手がシドの体を抱きしめた、その直後だった。
「きゃあっ!!?」
「っ……!」
二人の体が、ガクンと揺れた。
シドの右腕が切断されたのだ。鎖鎌の技に、「相手傷つけずに鎖だけを伸ばす」なんて器用な技はない。レミが咄嗟にはなったのは、「鎖で敵を絡め取って鎌を突き立てる」技だったのだ。彼女の決して弱くない攻撃をもろに右腕に受けたシドの『部位欠損ダメージ』は、ある意味当然と言えた。
そしてある意味当然と言えたからこそ。
「っしぃっ!」
「っ、うぁっ……」
シドはしっかりと対応をとっていた。
ソラを抱いていた左腕を伸ばして、上方へと逃げようとした鎖を握りしめる。じゃらじゃらと音を立てて鎖が手のひらを擦っていく様は到底気分のいいものではないだろうが、それでもシドは全身全霊でその鎖を握りしめる。同時にソラが、シドの体に回した両腕に強く力を込める。
「よーし、ぜってぇはなすなよ……!」
「う、うんっ!」
ソラが頷く。顔を赤らめ、何度も、何度もうなずく。
「だ、大丈夫ッスか!? すぐ引き上げるッスよ!」
「……もうちょっと、堪えて……」
穴の上から、レミとファーの声。
あわてる声と同時に鎖が強く引かれて、二人の体が上昇していく。
ゆっくり、ゆっくりと登っていきながら。
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