番外中編
蒼空のキセキ5
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「んぅ……?」
今まで味わったことのない奇妙な感覚の中で、私は目が醒めた。
浮いてる。
そして。
「……だれ……?」
抱きしめられている。
誰かに、力強く。
「おー気が付いたかよ……」
その誰か、は。
「まったく、最後の最後にやらかしてくれるぜ……」
寝惚けた私に向かって、頬に汗を一筋光らせながら、にやりと笑った。
◆
シドの反応は、早かった。
ソラが足場へと飛び移ろうと膝を曲げた、その動作だけで彼は彼女がいつもと違うことを鋭敏に察知していた。誰よりも彼女の近くで彼女の一挙手一投足を見届けた彼だからこそ、異変の確信をもって即座に駆け出していた。
「レミっ、『鎖鎌』!」
「っ!?」
同時に叫ぶ。
何が起こったのか分からなかっただろうレミの声には答えず、そのまま『敏捷』全開の疾走。一極化して鍛え上げたその足は、ポリゴン形成すらも置き去りにしてまさに風となって彼女の下へと駆け抜けていく。
がくり、と崩れる彼女の膝。
同時に生じる、ボスの爆散による大量のポリゴン片。
「おおおっ!!!」
シドの喉から、絶叫が迸る。
ようやく事態を把握したレミ、ファーが動き出したときには、彼はもう床を蹴って飛んでいた。
そこは、空の穴。
落ちれば間違いなく命を奪うだろう空間に、シドは一片の迷いもなく飛び込む。
同時に、彼の世界がスローモーションへと変じていく。
なにかを掴むかのように、空中を掻く指先。
意識の電源の切れたような、空虚な表情。
聞き取れない、しかし確かに何かを紡ごうとした唇。
そのすべてが、一瞬だけ空で止まり、そしてゆっくりと下降し。
「ソラあああああああああああっ!!!」
落ちていく寸前のその体を、シドは寸毫の迷いもなく力強く抱きしめた。
◆
「し……ど……?」
ようやく戻ってきた意識の中で、彼の名前を呼ぶ。
けれども喉から出たのは、蚊の鳴くような細い音だけだった。
「おおシドだよ。目ぇ覚めたようで何よりだ」
それでも彼は、その声にこたえてくれた。
「私……浮いてる……?」
「おぉ、そうだ。で、起きたんだったら早急に状況を把握しろ。時間ねえぞ」
「状況……って、シドっ! 腕っ!!!」
シドの声のままに目を向け……私は思わず声を上げてしまった。
シドの、右腕。私のプレゼントである手甲に包まれた腕には重厚そうな鎖が絡みつき、その先端にある刃……大きな鎌が、彼の二の腕に深々と食い込んでいた。おそらく細腕の半ばほどまでを断ち切っているだろうそこから、痛々しい継続ダメージの赤いエ
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