幕間 マルシアと妖精
3幕
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バイカール廃鉱の方向へ逃げた、とのウォーロックの証言から、エルたちは廃鉱へ向かった。
懐中電灯という気の利いた物は持っていないので、灯りは先頭を行くフェイが精霊術で灯した光の球だけだ。その光の球も、テロリストにバレないようにするために最低限の大きさ。
おかげでエルは坑道を行く途中で何度も躓いた。転ぶ前にルドガーが支えてくれたから大事はなかったが。
そうやって坑道を進んでいくと、途中で人影と遭遇した。
とっさのようにルドガー、ローエン、エリーゼが身構えたが。
「あなたたちは……!」
「マルシア首相! ご無事でしたか」
その人影はマルシアと、彼女の部下らしき人物だった。
「私たちだけは何とか逃げ出せました。ですがまだ捕えられている部下がいます」
「――犯人は、エレンピオス人ですか?」
「……はい。アルクノアの残党ですから」
ローエンは何故か険しい表情をし、粛々と肯いた。
「分かりました。以後の対処はリーゼ・マクシア政府にお任せください」
マルシアもローエンによく似た表情で肯いた。
「ところで、何故子どもがいるのですか。まさか救出作戦に参加させる気ではないでしょうね?」
その時、エリーゼが思いきり顔をしかめたのをエルは目撃した。
『エリーゼをバカにするなー!』
先に、エリーゼの感情を表に出す装置であるティポが、マルシアに食ってかかった。
「わたし、子供じゃありません」
「そーだよ。エリーゼはフツーのコドモよりずーっと強いもんっ」
「彼女は優秀な精霊術士。我々の貴重な戦力です」
ローエンもフォローを入れたおかげか、マルシアの態度はいささか軟化した。
そんな時だった。
《ヘヘヘーイ、着信だよー。ヘヘヘーイ、着信だよー》
「これって、わたしがルナにあげた……」
ティポの合成音声による着信ボイス。それを鳴らすGHSを取り出したのは、何とマルシア首相その人だった。
電話の相手はガイアスだったようで、今回のテロリスト制圧作戦について話している。
話し終わったマルシアがローエンに声をかけるが、ローエンもエリーゼのメル友発覚でそれなりに驚いているらしく、少し声が裏返っていた。
「フェイ。あなたも一緒にいらっしゃい。〈あなた〉がここにいるのはマズイわ」
「ハイ。分かってます。おば…首、相。姉も一緒でいいですか?」
フェイがエルの背中に手を添えた。
「姉? 妹…ではなく?」
「姉です。わたしのたった一人の姉さんです」
エルは複雑な思いに駆られた。――この妹はいつからこんなに大人びた貌をするようになったのだろう。ミラに突っかかって、エルが叱ったらすぐに泣いた泣き虫のフェイはどこへ行ったのか。
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