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SAND BEIGE -砂漠へ-
第三章
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「どうして長袖なの?」
「冷えますので」
「冷える場所、このカイロで」
「はい、そうなんです」
「そうした場所があるのね」
「半袖を持っておられますか?」
 ガイドさんは私に真顔で尋ねてきた。
「若し持っておられなかったら何かを羽織られて」
「長袖ならあるわ」
 日本にいる時に着ていたものだ、丁度一着持っていた。
「じゃあそれを着て」
「そうしてくれれば何よりです」
「わかったわ、けれど」
 それでもだとだ、私は首を捻って言った。
「カイロで寒い場所っていうのは」
「すぐにわかりますよ」
 ガイドさんはいぶかしむ私ににこりと笑って言うのだった。
「では着替えられてから」
「そこにね」
 案内してもらうことになった、そして。
 私は長袖を着てからあらためてガイドさんの前に出て案内してもらった、そして案内してもらった場所はというと。
 外だった、町から出て。
 砂漠に出た、その砂漠は確かにだった。
「寒いわね、それもかなり」
「はい、夜の砂漠は寒いんですよ」
「昼はあんなに暑かったのに」110
 このことが不思議だった、今は長袖でないと辛い位寒かった。
「不思議ね」
「これが砂漠なんですね」
「昼は暑いのに」
「砂なので熱が逃げやすいんですよ」
 それでだ、夜になるとだというのだ。
「一気に冷えて」
「こうなるのね」
「はい、ですがどうでしょうか」
「どうっていうと?」
「いえ、この国には癒されにきたのですね」
 ガイドさんは私に優しい笑顔で問うてきた。
「そうですね」
「気付いていたのね」
「時折おられますので」
 私の様な旅人がだというのだ。
「それで」
「そうなのね」
「そうした方はいつもここにご案内しています」
「砂漠になの」
「夜の」
 私が今いるそこにだというのだ。
「そうしています」
「それはどうしてなのかしら」
「心を癒すには静かな場所がいいので」
 だからだというのだ。
「いつもこうしています」
「心、ね」
「静かで。しかもです」
 それに加えてだというのだ、私に話してくれる。
「風がありますね」
「そうね、微かにだけれど」
「この風もまたいいのです」
 夜の砂漠に吹く風は強くはない、微かなものだった。
 けれどその微かな風がだった、このうえなく優しく。
 昼とは全く違い静かで寒い位の砂漠にいる私の身体に当たって来る、その風を感じてだった。
 私はガイドさんの言う通り癒しを感じた、そうして。
 自然とだった、その目に涙を感じた。涙が少しずつだけれど確かに流れてくる。
 泣いていることを自覚して、私はfガイドさんに言った。
「背中を向けていいかしら」
「はい」
 ガイドさんは私に優しい声で答えてくれた。
「どうぞ
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