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死んだふり
第四章
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第四章

「野村もやりおるわ」
 目の前では野村が江本に何やら話をしている。表情から見てすぐにかなり上機嫌だとわかる。
「それにしてもいきなり主力級をあれだけ出してくるとは思いませんでしたね」
 コーチが言った。
「ああ、それには驚いたわ。けれどな」
 西本はの村から視線を外すことなく言った。
「明日はこうはいかんで。こっちもやられっぱなしは嫌いやからな。いや」
 彼はあえて言葉を変えた。
「勝つんや。そして今年こそ日本一や」
 そう言うとベンチを去った。そして隣を通り過ぎた山田に対して言った。
「次の試合は頼むで」
「わかりました」
 山田は頷いた。彼は先発を命じられたのだ。
 西本は廊下を歩きながら考えていた。当然次の試合のことである。
「先発はおそらく山内や。江本やない」
 まずはそこから考えた。
「あいつの変化球はムラがある。そこを狙うか」
 山内の武器はスライダーであった。だがこれは日によって大きく変化が異なっていた。
「ノムのリードは厄介やが」
 それに囁き戦術も気になった。だがそこで退いては勝てる勝負も勝てはしない。
「わしも伊達のあの連中を育てたわけやない」
 阪急の強力打線には絶対の自信があった。何故なら彼が一から鍛え上げた打線だからだ。
「次の試合ではあいつ等に今日もぶんまで働いてもらうか」
 そう言うと彼はバスに乗った。そして宿舎へ帰って行った。
 次の試合、阪急は山田を予定通り山田をマウンドに送った。彼はその大きく腕を振り被る投球モーションからアンダースローでボールを繰り出す。西本は彼の投球練習を見ていた。
「今日はあいつはあまり期待できへんな」
 決して気分が乗っていないのではない。山田は気合充分である。しかしだからといって勝てる程甘い状況ではない。
 見れば膝が浮いていた。山田は彼が一からエース学を叩き込んだ男である。彼の調子は手にとるようにわかる。
 膝が浮いているのは山田が不調な時である。こうした時の山田には彼の最大の弱点が露わになるのだ。
 一発病だ。山田はとかくホームランを浴びることの多い男であった。歴代被本塁打は二位である。近鉄の鈴木啓示に次ぐ。特に有名なのが前述の日本シリーズにおける王のホームランであった。
 特に南海には左でパワーのある男がいた。門田博光とジョーンズである。野村の前後を固めるこの二人を西本はある意味野村よりも危険視していた。
「あの二人はちょっと打ち方を変えたら凄いパワーヒッターになるで」
 ある時西本は二人を見て記者達に言った。
「そうですか?ジョーンズは少しバッティングが荒いですよ」
「門田はどちらかというとアベレージヒッターでしょう」
 記者達は口々にこう言った。
「君等はそう思うか」
 西本はそれを聞いて彼等に言っ
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