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渦巻く滄海 紅き空 【上】
六十九 約束
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させた。帰路につく。
一日中署名運動に走り回り、疲れ切った身に鞭打って踵を返した、ちょうどその時。

背後で獣の声がした。


即座に避ける。口から牙を覗かせる狛犬のようなソレをクナイで一閃。真横から迫るもう一匹を仕留めた後、サスケの眼は素早く真向かいの家を捉えた。

ペンキの剥がれた青い屋根。その上に誰かいる。

再び屋根から躍り出た数匹の狛犬。それらの猛攻を全てかわし、屋根へ飛び乗る。途端、サスケの眼前に短刀が突き付けられた。

月光の許、カキンと刃物と刃物が搗ち合う音が響く。


「力、弱いな…。君、それでもチンチンついてるんですか?」
朗らかな笑顔に反して下品な物言い。短刀をクナイで受け止めたサスケは露骨に顔を顰めた。足蹴りを繰り出す。
相手は容易にそれを避けたが、背後から聞こえた声にぴたりと動きを止めた。
「お前こそ、弱いな。それでも男かよ?」


少年の前にいたサスケが白い煙と化す。何時の間にか作っていた分身を囮に、サスケ本人は少年の背後を取っていた。
しかしながら、首筋にクナイを突き付けられた少年は動揺一つない。むしろ、その口許には笑みが湛えられている。
「…ふふっ。流石ですね」

微笑を浮かべた少年は短刀を納めた。その嘘臭い笑顔に、(胡散臭い奴だ)とサスケは内心悪態をつく。
警戒を緩めないサスケに、少年は肩越しに微笑んだ。その白い肌は月下にて益々生白く見える。



「僕はサイ。よろしくね、サスケ君」
それは嘘の皮を被った、完全なる笑顔だった。

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