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渦巻く滄海 紅き空 【上】
六十九 約束
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うして…あんなガキを連れて来た」
「似てるだろ。年の頃も同じだよ。お前さんの弟子もそうだろ」
綱手の頭にふっと一瞬弟の顔が過る。その顔は笑顔だったが、だからこそ自分を責めているようで、彼女はぎゅっと震える我が身を抱き竦めた。

無言で綱手の様子を見ていた自来也がやにわに腰を上げた。ガタタ、と椅子の軋む音に気づいた綱手が自来也の動向を目で追う。
どうするつもりだ、と問う視線に応え、自来也は控室の扉に手を掛けた。

「わしは一応、アイツの師匠なんでの」
新術の修行をつけてくると言外に答えると、自来也は「じゃあのぉ」とひらひら手を振った。だが完全に外へ出る前に再度振り返る。

「アイツの忍道、知ってるか?『真っ直ぐ自分の言葉は曲げない』だと…――――全く、馬鹿な奴だよ」
どこか誇らしげにそう伝え、自来也もまたナルの後を追い駆けて行った。


控室に独り取り残された綱手はのろのろと視線を手術室へ投げた。静寂に満たされた空間内でも視線の先では慌ただしい緊張感が溢れている事を彼女は理解していた。
「そうだ…」

しん…と静まり返った室内で響く独り言。だがその声音は彼女の決意の現れが強く滲み出ていた。
先ほどのナルに倣うように、己に言い聞かせる。
「弟子一人救えなくて何が三忍だ。何が医療スペシャリストだ」

深く深く言葉を噛み締める。そして綱手は一歩足を踏み出した。
もう、震えは無かった。







「く…っ、血が止まらない…」
手術室。
其処では、シズネがひたすらに治療していた。ぐったりと横たわるアマルを前に、唇を噛み締める。
既に匙を投げた町医者が「この出血量だともう…」と断念した時、室内に明かりが射し込んだ。
「泣き言を言うな!」

控室から洩れる光を背に佇む存在。その姿を目にした途端、シズネの顔が一転して明るくなる。
「綱手様!」
「私が診る。サポートしてくれ」
アマルの容態を一瞥し、綱手はすぐさまシズネと町医者に指図する。慣れた様子のシズネと戸惑う町医者がそれぞれ従う中、綱手はアマルを見つめた。
「絶対助けると約束する…なぜなら私は―――」

生きるか死ぬかの瀬戸際。死生を彷徨うアマルにとって、綱手は正しく最後の希望の光だった。

「―――火影になる女だからね」



師と友の力強い約束に、ほんの一瞬、アマルの顔に生気が戻った気がした。





















細長い通路を幾重にも曲がってゆくと、やがて大きな家に行き当たる。突き当たりの白い壁を一瞥した彼は、深い溜息をついた。
空を仰ぐと、中天に月が掛かっている。

皓々たる月明かりに目を細めたサスケは、(今日はこのあたりにしておくか)と身体を反転
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