暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【上】
六十九 約束
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
頼む!アマルを助けてくれってばよ!!」
「私はもう…医療は止めたんだ」
「嘘だろ!だって姉ちゃんは医療スペシャリスト…」
「よせ。ナル」
見咎める自来也の制止を振り切って、ナルは猶も懇願した。綱手の服を掴み、縋る。

「アマルが言ってたってば!あんたは優秀なお医者様だって!すっげぇ名医だって!オレもいつか先生みたいな医療スペシャリストになりたいって言ってたってば!!」
「……ッ」
「お願いだってばよ…っ!オレ…オレ、アマルと約束してんだ!新術を完成したら一番に見せるって…!オレにその約束、破らせないでくれってばよぉ!!」
「ナル…お前、」
椅子に座っていた自来也が思わず身を乗り出す。

反面、綱手は終始俯いていた。未だ治まらぬ身体の震えに、内心苛立たしげに舌打ちする。
血液恐怖症を克服する努力はしてきたはずなのに、いざという時には動けない自身が情けなかった。



火影就任要請が綱手に下されたという話をパックンから聞いたナルとアマル。
驚愕したナルはアマルとトントンには宿で待機するよう告げ、彼女自身はまずパックンと共に自来也を捜しに居酒屋に向かった。
だが残されたアマルとて、居ても立ってもいられなかった。綱手から詳しい話を聞こうと、トントンに匂いを追跡してもらい、宿を飛び出してしまう。

トントンの案内で短冊城に辿り着いたアマルは、今正に綱手へ迫る大蛇丸の光景を目の当たりにする。師の危機に直面した彼女は思わず二人の間に割り込んでしまった。

一度自来也に会う為居酒屋に向かったナルと、真っ先に綱手がいる観光名所へ行ったアマル。
この些細な差異が今回の悲劇を呼び起こしてしまったのである。



伏せたまま動かぬ綱手をナルは暫しじっと見つめていたが、やがて踵を返した。控室の扉を開ける。「何処へ行く?」と自来也に呼び止められた彼女は何の脈絡も無い答えを返した。

「オレの夢は火影になる事だ」

唐突に告げられた夢。
だがその一言は綱手の心を動かした。ハッと顔を上げる。

三忍二人の視線を背中で受けた子どもは振り向かない。振り返る素振りもない。
ただ、独り言のように淡々と続ける。
「でも…約束一つ守れない奴が火影になんてなれるかよ」
そこで振り向く。一点の曇りも無い青い瞳が綱手を射抜いた。

「修行、行って来るってば――――いつアマルが起きてもいいように」
術、完成させてみせるってば、と最後に一言言い残し、ナルは控室を後にした。


片や三忍、片や下忍。だがそのたかが下忍の眼光に綱手は怯んだ。ナルのあまりにも真っ直ぐな眼差しには、かつての最愛の人の面影があった。
息を詰まらせる綱手を横目で窺い、自来也は瞳を細める。

「今のがわしの弟子―――波風ナルだ。面白い奴だろ」
「ど
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ