六十九 約束
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
た。
「殺すつもりはなかったのに…」
一瞬、気まずげな表情を浮かべる。だが即座に刃物を口内に納めた大蛇丸は、刃先に滴る血をぺろりと舐めた。
「ちょっと血を見せてあげようと思っただけ。私は悪くないわ」
唇に付着した血を舌で拭う。悪びれる様子も無く、大蛇丸は肩を竦めた。
彼は綱手の血液恐怖症がまだ治っていないだろうという思惟から、脅しのつもりで軽い傷をつけようと仕掛けたのである。だが刃先が綱手に届く前に影が割り込んできたのだ。
綱手に掠り傷を負わせるはずだった刃は、両者の間に押し入った人物を見事に貫いた。
「……ッ、」
いきなりの展開に声を失う綱手とシズネ。愕然とする二人の眼前で、全身を血に染めた乱入者はガクリと地に膝をつく。
崩れ落ちた姿を目にして、ようやく我に返った綱手の叫びが沈黙を切り裂いた。
「――――アマルっ!!」
彼女の髪は果たして元から赤かっただろうか。
全身を真っ赤に染めた弟子。駆けつけた師は、そのあまりの血の量に怯んでしまう。
代わりにシズネが急ぎ、アマルを胸に掻き抱いた。
まだ、息はある。
すぐさま医療忍術で治癒し始めたシズネを、大蛇丸は嘲笑った。
「綱手…あんたを庇ったその子が悪いのよ」
無言で治療するシズネと血の恐怖で震える綱手へ視線を這わす。最後に血濡れのアマルを視界におさめ、彼は更に言い募った。
「綱手の弟子になったばかりに……災難ねぇ」
医療忍術を施すシズネの傍らで子豚が腕の中を覗き込んだ。アマルと一緒に来たのだろうか、心配そうに窺うトントンが切なげな声で鳴く。
この時、治療に専念していたシズネは、なぜアマルが綱手の弟子だと大蛇丸が知っているのか疑問すら浮かばなかった。一方の綱手も血への恐怖から、大蛇丸の言葉など気にも留めなかった。
しかしながら震えつつも「黙れ…ッ!」と気丈に言い返す。
「そうつれなくしないで…―――取り引きしましょう」
咽返るほどの血臭に、大蛇丸はうっそりと目を細めた。
「―――お前の愛した弟と男を生き返らせてあげるわ……その弟子もね」
「……ッ!?」
「笑わせるな…ッ!」
大蛇丸の一言に反応を示した綱手に反して、シズネは声を張り上げた。アマルを抱く腕に力を込める。
「第一、この子はまだ生きている!!勝手に殺すなっ!!」
息も絶え絶えの様子だが、確かにアマルはまだ生きている。そう主張するシズネの前で大蛇丸はカブトの名を呼んだ。
察したカブトが静かに眼鏡を押し上げる。地に広がる赤い泉の量を分析し、彼は冷然と答えた。
「確実に致死量を超えていますね。もって三日…」
「そういう事よ…。つまり貴女は近い内に、三人、失う事になる」
愕然と瞠
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ