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カナリア三浪
カナリア三浪
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う、思い返してみれば。それを感じさせなかったのは魂の熱。ああ、かわいい俺の魂よ。
 俺はこの女となぜこんなにぴったりと愛し合ったのだろう? そこには次元を超えたトンネルがある。その仕組みは神様がなぜ電気を人に与えたか。その問いと同じくらいのもの。この声に隠れて育った詩人の魂よ。世の中に張り巡らされた配線を通ってどこかに行こう。

 それから一週間して、デモ音源が届いた。その音を聴きながら、目が据わってゆくのがわかる。理性が言葉を生む。
「いいじゃないか」 
 頭の中で、今まで使ったことのない脈が働いている。ムズムズする。本能がそれを読み取るのか否かを探っている。それは次第に思考を強ばらせて、無感動を呼ぶ。書くべき何かがあるならば、それは自然と運ばれて来るはずだ。黙り込んでベッドに寝そべり、布団を首まであげた。
 歌詞がかわっていた。
『顔の強い女が、繊細な男を見つけたが、興味を持った瞬間、彼がくすんで見える。触れたとたん嘘になる。本当のことが嘘になる。昨日の愛にアクが出ちゃってさ、やー…』そんな内容が入ってる。

 プロデューサー曰く、「ミュージシャンは因果応報の頂点にいるんだよ。100%無罪だよ。みんなで一緒に天に打ち上げるんだ。愛の不条理をさ。曇りのない心でもってね」こんな感じで導かれています。 コウタローより。

 窓の外で降る雪。触れなければわからないその冷たさは、大人になることがどういうことかを知らせる。
「頑張れ民主主義」
 誰かが耳元でささやいた。
「嘘をついてもいいんだ」

―導火線に火をつけてあげる

 どんな花火になるだろう。

「導火線の話か?」おっちゃん言った。「火がつく瞬間な。それで、みんな主人公だと思っちまうんだ。俺、ここしばらく朝九時に火ぃ着くのよ。朝ダチ」笑っている。「ちまたの噂ではよ、ホームラン打たすと金がもらえるのよ」
「それ、何の話ですか?」
「超能力よ」
「どこのだれの話」
「キャバクラで聞いた。この前、来た客が『ホームラン打て』って念じたら、ホームラン打ったちゅうんだ。プロ野球の話よ」
「金は、どこから?」
「ギャンブルよ。神の声に従ったら当たる。来るッちゅうのよ。その金で遊んでるらし。いい事すると金がもらえる。因果の話」
「ボイスですか」と、俺は訊く。
「ボイスって何よ」
「昔の映画にあったんですよ」俺は『砂の惑星』を思い出していた。その映画があったから、少し霊感を信じている。頭の片隅に火がついて念が出ちまったおっさんを想像する。
「心で念じると、その通り人が動くんですよ」
「そいつは主人公か?」
「誰がですか?」
「その、ボイスってやつ」
「ええ」と俺は答えた。「今頃その人、何しているんですかね」
「テレビに向かって『チンポ出せ』って念じている
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