「ボクサー だいたいみんなノーモーション」(1)
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いに、ボクサーが何かを変えてはいないか? どう? ん? 不細工は本気のときが一番 不細工だ? まぁ……。言うなや。不細工がカッコいいときもあるだろ? それで価値観を『かき回す』だろ? 違う?」
タノムは天井を向きながら、宙を見つめていた。中村ちゃんは、布団の中で丸まっている。中村ちゃんは「ボクシングという枠の中、階級に縛られながら、一つの壷の中で、混沌とも言うべき、様々な個性の世界」を想った。
『かき回す』
「それは神様のヘラで混ぜられる、濃密なスープのようだね」そう想った。
タノムは鮭を焼き。中村ちゃんはペニスをいじった。鮭は紅鮭。身離れがよく
美味だった。ペニスはゆるりと長く、現実的な未来を、しかと見つめることの邪魔にはならなかった。
意地悪な日本人がいた。彼らは負けたボクサーをあざ笑う。やさしい日本人がいた。彼らはなぐさめた。そして、弱い人間がいることに安心した。どちらも、ボクサーより高い位置にいるようだった。彼らは負けたボクサーにすべての荷物を預けて去っていった。負けたボクサーは、「なるほど。勝たなきゃいけないんだ」と、悟った。目の前には以前より高い壁があって、後ろには冷笑がある。ボクサー。何だかのっぴきならないな。
「甘みがきてねぇ」中村ちゃんが大きなイチゴをかじっている。「大丈夫っすよ。軍用毛布二十枚ぐらいのプレッシャーですよ」中村ちゃんは考える。この緊張感。捨てるべきかまとうべきか。「ヤツ。そんなに大きくないすよ」
つづく
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