空を、見て
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なんで結婚が女の幸せって決めつけるのかしら。…私達はタカラジェンヌですよ?演じる事でお金を頂いて、自力で生活する事もできるんです。あなたが現れる前は、タッチーはそうして自立していこうと考えていたし、あなたが居なくなった後は、宝塚で生き抜こう、と思っているようでもありますけど」
タッチー、今幸せそうに笑っているでしょう?と、彼女が言う。
「そうですね…」
「それに私、聞いたんですタッチーに。『どうせ私が先にあの世に行くから、あの人によろしく言っておきましょうか?』って。あの子、『そうしてくれる?』って言ってましたよ」
「え…」
「『私もいずれ、そちらに行きますから、それまで待っていていただけませんか』ですって。…なんで疑問形なのかしら、もう答えをいただいてもあの子に教える手段なんてないのにねぇ」
まぁ、でもね。
「だからあなたも、その気があるなら待っていてあげてくださいな。きっとあの子、たとえ年老いてこっちへ来ても、根性で若返ると思います。…今生では勤労女性としての一生を、来世ではあなたとの幸せな一生を、少なくとも今は望んでいる気がするんです」
そう言い終えて彼女は、少し心配そうに、そして期待を込めて彼を見た。
彼は、しばらく水面に映る件の彼の人を見つめていたが、やがてぽつりとつぶやいた。
「そうですね…私も来世では、彼女と名実ともに夫婦と呼ばれる関係になりたい、と思います」
「………!!」
「彼女には、幸せになってほしい。しかし今はそれが自分の力ではできないのがもどかしく、つい弱音を吐いてしまいましたが、今は彼女が幸せならいいのです。
そう、来世で、今度こそ私と共に幸せになっていただけるなら、今はいくらでも彼女を待つ事が出来る気がする」
「まぁ、熱烈ですわね」
「伊達に出会って数回で結婚を申し込んではいませんから。…実際一目惚れに近く、そして想いは相当深いのですよ。もしも彼女が今生で伴侶を得たとしても、こちらに来てからは情熱で奪い返そうと思えるほどには」
「ふふふ、なんだか楽しみになってきました」
「そうですか?…そうかもしれませんね」
待つ事は退屈かもしれませんが、未来を思えば楽しめそうですね、と彼らは顔を見合わせて笑った。
「ところで、あなたこそあちらに居たかった、とは思わないのですか?」
ひとしきり笑った後、そう尋ね返した彼に、「まぁ、ずいぶんと今さらな話」と言いつつ彼女は答える。
「そうねぇ、確かにあちらに居たい気持ちはありますけど…でも私、ずいぶんと満足してここに来たんです」
「ほう」
「死ぬなら、舞台の上で。そう願った俳優は数多いでしょうけど、実際にその願いがかなう俳優なんてそういないはずでしょう?でも、私の願いはかないました。…あの子たちのおかげで」
ホント、馬鹿な人たち。
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