空を、見て
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ているかもわかりませんよ」
彼はまだほほ笑んでいたが、それは彼女の目にどことなく寂しそうに映った。
「あら、意外にタッチーをご存じないのね?掛けてもいいですけど、きっとあの子、結婚しませんよ」
「…何故、そう思われるのです?」
「だってあの子、単純馬鹿ですもの」
「…………」
「あの子は、タッチーは目の前の事で精一杯で、ちっとも他所事に目を向けれないんです。それは彼女の家庭環境がそうさせたのかもしれませんけど、でもあそこまでいけば元々の性格もあるのだと思います。
ホント、昔っからそう。
宝塚っていう居場所だけはなんとか確保しようとがむしゃらに努力して、結果的に成績が良くなっただけだし。
居場所が宝塚しかないっていう苦しさをなんとか脱却しようとして初恋に目覚めて、思わず「さらってけ」発言して相手に引かれてしまった事もあったわねぇ。
宝塚こそが自分の道だと、思ってからはまた一途にタカラジェンヌたろうと他所事に目を向けれなくなって、やっとこ本気になった初恋の君の思いなんか気づかずじまいだったし…
あなたに妻問いされてからは、あなたのことしか頭になくて思わず戦死しそうになるし…」
「…同僚をどんな目で見てたんですか、あなたは」
「それはもう、冷静に」
あきれ顔の彼に、にっこりと笑って彼女は続ける。
「それこそ人生の一番輝いていた部分を共有していたんですよ?あなたとは年季が違いますもの…その私から言わせていただければ」
そう、あの子はきっと。
「きっと、あの子はあなたの事を忘れたりしない」
「…………」
「『熱烈に』思いを伝えあったのですもの、きっとあの子はその思い出を後生大事に、一途に心の中にしまいこんで生きていくのだと思います。
…それに、今は『宝塚 雪組主演男役』になったのだから、それで頭が一杯ね。きっと」
同期の友を想像して話す彼女は、まるでその光景が目に見えているかのように、歌うようにスラスラと、とめどなく話している。
「今は、宝塚のトップとして。それから先は宝塚の指導者として。戦後の混乱期でもありますし、宝塚も人材が不足しておりますもの。結婚しなくても、女の一人暮らしでも悠々と生きていけるのではないかしら。
…ですからあなたも、心おきなく待っていてよろしいんじゃないかと思いますよ?」
「そうで、しょうか」
「そう思いますけど」
和やかに歓談しているタッチーやリュータンの見える水面を眺めながら、
彼は不安そうに、彼女は少し呆れたように会話を続けている。
「しかし、どうしてそう思われるのか…。私は彼女に、「幸せになってください」と言ってしまったんです。いわば、「貴女を幸せにできる誰かを見つけるように」と、言ってしまったようなものだと思うのですが」
「男の方って皆そう。
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